愛着障害は命がけで生きている
こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。
周りから理解は得られにくいけど、愛着障害を抱えて生きていくのは大変なんです。
どんな風に命がけで大変なのかを書いていきます。
愛着障害でサバイバル中の人は、自分だけじゃないことに気が付いてほしいし、愛着障害の人をサポートしている人は気持ちを理解することに役立ててほしいです。
そもそも愛着障害についてわからない方は過去記事をご参照ください。
①慢性的に「死にたい」
愛着障害になるまでの過程で、たくさんのトラウマ体験、傷つき体験があります。
ネガティブな経験があった、ということだけでなく、ポジティブな経験も欠けています。
ありのままの自分で愛される体験が圧倒的に足りません。
そのため、自分の存在価値を肯定することができません。
急に死にたくなったように見えた場合でも、慢性的に死にたい気持ちが隠れています。
普段は自分の心の奥底に隠していますが、古傷に触れたときに死にたいが抑えきれなくなってしまうのです。
普段の「死にたい」の隠し方は、他人に隠しているだけのこともあるし、本人が心の奥底に「死にたい」を自分でも見えないように封印していることもあります。
生きるか死ぬかのサバイバルが心の深い部分でずっと繰り広げられているのです。
②驚異的な出来事が多い
何重にも傷つき体験を繰り返し、傷が複雑な構造をしています。
日常のちょっとした出来事でも、芋づる式に過去の古傷に触れてしまいます。
大したことないと感じる出来事も、「生きるか死ぬか」の問題になりやすいのです。
私の場合、一日を無為に過ごしてしまうと、「一日をこんな無駄に過ごしてダメな奴だ、能力がまるでない、生きていても仕方ない」と思うことがあります。
また、電車で知らない人からじろじろ見る人がいると、「じろじろ見られて馬鹿にされている、いつでも馬鹿にされるんだ、生きている限りこんなことが続くのか」と思うことがあります。
その時の健康状態や精神状態にもよりますが、他の人から見た、「たったそれだけのこと」でも「存在意義」や「生きるか死ぬか」に結びつきやすいのです。
抑え込んでいた「死にたい」が、ちょっとしたことでグロテスクに浮かび上がり、より強調されます。
今日もまた何かに傷つくのか、という不安が常にある苦しさもあります。
③理解されず、助けが得られにくい
愛着障害の傷は理解が得られにくいです。
精神科の医師、看護師でも理解が難しい人がいます。
健康的な愛着を形成する要素は次の①~③が考えられます。
②周囲のサポート
③本人の強み(ストレス耐性 など)
愛着障害の傷が理解できない人は、①~③のどれかが欠けていたとしても、他の要素でカバーできる程度であった人が多いです。
そして、他のサポート要素が役に立たないような大きな傷つきというものを想像できないのです。
そのため、「だれでも傷ついた経験はあるし、本人の甘えの問題だ」といった結論に至りやすく、本人なりの善意で叱責してしまうこともあります。
周囲から理解されないため、助けを求めても得られないということだけでなく、助けを求めること自体も難しいのです。
助けを求められない理由として以下のようなものがあります。
・助けを求めたことで問題がより大きくなったことがある
・自分一人で頑張らなければいけないと思っている
・助けてもらった経験がなく、どのように助けを求めてよいのかわからない
・助けを求めてもいいということを知らない など
本人のなかで生きるか死ぬかの大問題になっても、そもそも助けを求めることができず、助けを求めても理解されにくいことから、問題解決が困難になります。サバイバル状態から抜け出せなくなります。
まとめ
慢性的に死にたい気持ちがあり、そしてそれがちょっとした出来事で強調されてしまう、理解も助けも得られないため、愛着障害の生活は生きるか死ぬかの問題になりやすいです。
得体のしれないものから、理解しうるものに変えられると落ち着くことができるので、愛着障害克服中の方はそういうことが起きているのか、という理解に役立てていただければと思います。
処方箋
愛着障害の治療法としてはいくつかありますが、まずは存在価値が信じられるように、自分軸を作って、自己肯定感を高めることが大切です。セルフコンパッションの実践(セルフコンパッションについて - ひょん先生のブログ)や、好きなことを大切に(好きは大切という話 - ひょん先生は背中で語りたい)してみましょう。
また、自分自身や他人に対するネガティブな思い込みを手放す必要もあります。これには認知行動療法が有用でしょう(認知行動療法について - ひょん先生は背中で語りたい)。
メンタル維持に必要な習慣についてはこちらにどうぞ。
おすすめの一冊
毎度おすすめしている岡田先生の本です。
なによりもまず、何が起きているのか理解して、回復の筋道を知ることが大切です。