ひょん先生は背中で語りたい

精神科医。いじめられ体質から成長中。月曜日更新予定。

【愛着障害】誰も信頼できず安らげない理由

 

こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

愛着障害では安心感が大切です(愛着障害とは - ひょん先生は背中で語りたい)。

しかし、安心できる人間関係のなかにあっても、疑い続け、敵意も感じとりやすいのが愛着障害の特徴です。

安心感が欠けてるだけでなく、安心できる場で安らぐ能力が不足(欠如)しているのです。

 

これを知らずに、安心できる環境だけを求めると、そもそも安心を感じる力がないので頑張っても頑張っても安らぎや安心感を手に入れることができず、余計に傷が深くなってしまうことがあります。

 

安心できる環境にあっても、どうして安らげず、人を信用することが難しいのかを解説します。

解決法についても簡単にお伝えします。

 

 

1.相手が発している安らぎのメッセージに気付けない

「腕組みして思い悩む女性」の写真[モデル:SAKI]

安心感が得られにくい環境にいると、相手が発している安心のシグナルを見落としやすくなります。

思いやりや誠意を感じる機会が少なく、優しさを感じ取るトレーニングがほとんど欠如しているのです。

 

「いやいや、私はとても空気に敏感で誰が味方で誰が敵かすぐわかるんです」、という人は多いですが、実際には、純粋な思いやりや誠意は見逃したり、その瞬間には受け取れていても、後から打算的なものであったと結論づけてしまうことが多いです。

相手が思いやりや誠意を示しても、あなたはそれを感じ取れず、信頼することが難しくなります

 

思いやりには気が付けなくても、傷つき体験やトラウマ体験を想起する出来事には過剰に反応してしまうので、「この人もやっぱり裏切る人だった」という結論になってしまうことが多いのです。

 

2.(無意識でも)相手に敵意を向けてしまうので安心感のある関係が築きにくくなる

「威嚇して縄張りを守る猫」の写真

 

お互いに安らぎを感じ、信頼を寄せることで、安心、安全感が成り立ちます。

猫を想像してみてください。

毛づくろいをしたり、体を摺り寄せたり、ゴロゴロ喉を鳴らしている猫だと癒しを感じますが、威嚇している猫ではどうでしょうか?

一般的に「この場が安全で、周りの人も安全だから、私も安全」という風に安心、安全感を感じています。

どちらか一方が敵意を発していると、この安心モードは成立が難しくなります。

 

長く危険で不安定な状態で生活していると、危険に敏感になっています。

その結果、些細な危険にも気が付き、対処するために、未だに厳重な警戒態勢になっています。

あなたが明確に敵意を感じていなくても「もう傷つきたくない」などの警戒心が、相手への敵意として現れてしまうことが多いです。

少しでも「怪しい」と感じるとそれが露骨に不信感や怒りにつながります。

 

診察医やカウンセラーが安心させたくても、安心のシグナルを感じ取りにくいうえに、厳重な警戒態勢に入っていると、安心モードになりにくく、治療が難航しやすい傾向にあります。

 

3.安心するとかえって不安になる

「悩み、頭をかきむしる男性」の写真[モデル:大川竜弥]

愛着障害の場合、助けてくれる対象が同時に傷つける存在であったため、安心すると警戒モードに入ってしまいやすいです(トラウマ的アタッチメント)

 

相手から癒しや安らぎが得らえると同時に危険も感じ、落ち着かなくなったり、些細なことから相手に不信感を感じてしまい、それを過剰に責めてしまうことがあります。

 

信用していた人が急に信用できなくなる、友達関係など浅い関係ではうまくできるのに恋人や家族に対しては怒りがコントロールできないという形で人間関係が不安定になりやすいです。

自分のなかで安心と不安の混在に気が付かなくても結果的にこのようになることはないですか?

 

4.何か相手とトラブルがあると、あっさり関係を諦めてしまう

 

愛着障害PTSDの場合、極端な白黒思考になりやすいことと、嫌なことや危険なことに打ちのめされてきたことがあまりに多すぎるため、トラブルが生じるとすぐに諦めてしまうことが多いです。

人間関係でもそうですが、治療についても、少しの期間だけ試して効果がなければ諦めてしまうことが多いです。

試している間は一生懸命していますし、怠けたり、楽をしようとしているわけではないのですが、「努力して頑張ってうまくいった経験」や「頑張りを認められた経験」があんまりにも少なすぎるので、「ダメならもうおわり」という考えに行きつきやすいのです。

 

 

愛着障害PTSDの場合、些細なきっかけで治療者に不信感を抱き、ぎくしゃくする瞬間が訪れることが多いです。
治療では、そうしたぎくしゃくすることが起きるかもしれないことは前提で、もし信頼が傷つくようなことがあっても、気持ちを伝え、お互いに和解するという体験が治療として必要になります。

 

まとめ

 

愛着障害の人がどうして安心できる環境にいても善い人ですら信用したり安らぎを感じることが難しいのかについて書きました。

安心のシグナルを受け取る力、相手にも安心のシグナルを与える力の未熟さ、安心と危険は一緒にくるという思い込み、ちょっとでもダメならもうおしまいという絶望の感じやすさが原因となっているのです。

 

処方箋

人から安心感を得ようとすると今日ご説明した4つのいずれかに障ってしまい、うまくいかないことが多いです。

 

相手との信頼関係を築くためにも、まず自分のなかの安心感を築く必要があります。

自分で自分の安心感を充足していき、安心を感じる力を育む意味と、安定した信頼関係を築く際に生じる不安定さを解消する目的があります。

 

ポリヴェーガル理論は安心感について理論的に解釈できます。

安心とはなにか、根本的に安心が感じられない理由を知りたい方は是非過去にご紹介している記事を読まれてください。

drrpsychiatry.hatenablog.com

 

おすすめの本

 

実践編についても記事を作成しますが、先に予習したい方は以下の本がおすすめです。

 

「安心のタネ」の育て方

ポリヴェーガル理論の入門編。

安心する力を育ててくれる簡単なトレーニング法を教えてくれているので、合うものを探してみてください。

 

 

「いごこち」神経系アプローチ

「安心のたね」よりも難しい内容を理解したい方におすすめ。