メンタルにも役立つ!知られざる小説の読書効果
こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。
今日は小説の読書効果について説明します。
教養だけでなく、メンタルにも役立ちます!
①もやもやに耐える力を身に着ける
返事を待たされたり、結果がすぐに出ない時に落ち着かなくなりませんか?
または、コミュニケーションで引っかかることがあるけどはっきり確認もできずにもやもやしてしまうことはありませんか?
もし、落ち着かなくなったりもやもやしやすいなら、不確実性の耐性(不確実な出来事に耐える力)が低いのかもしれません。
特に、愛着障害、PTSDではトラウマ的出来事を回避しようとするシステムが強く働き、0か100かの思考に捉われ、グレーな状態に耐えることが難しいことが多いです。
そして、不確実な出来事は、幼少期に受けた暴力的な事柄を想起してしまうため、相手に対する不信感や攻撃性を募らせてしまい、人間関係にダメージが生じることもあります。
小説を読むことで、この不確実性の耐性が身に付くことが研究*1でも示唆されています。
実用書と異なり、小説は目的がなく、結末も宙ぶらりんであるため、不確実性の耐性が身に付くのではないかと思います。
小説を読むことで、もやもやに耐える力を鍛えましょう。
②自分以外の人の経験や行動パターンを知ることができる
人は誰しも自分というものに捉われやすい傾向にありますが、特に愛着障害では、健康的な人間関係を体験することができなかったため、偏った見方をしてしまうことが多いです。
被害的に捉えすぎてしまったり、自責的に考えすぎる傾向にあります。
ちょっとした嫌なことも、酷い悪意にさらされたように感じてしまいやすく、人を避けたり攻撃的になりやすい要因にもつながります。
これも人間関係がうまくいきにくい要因になります。
小説はいろんな人の考え方や行動パターンを知ることができます。
たくさんの人と関わることでこれらを習得することもできますが、人と関われば関わるほど、すれ違いが起きて傷つくこともあります。
その点、小説はあなたの意見を否定や非難をすることがなく、安全に他人(世の中一般も含めて)の考え方、行動パターンを知ることができます。
こういう見方もあるよね、とか、こういう言い方をしてもいいんだ、という気づきがあります。
「すごく悪意を感じたけど、同じように小説の登場人物が行動している感じをみると、そこまで悪意はなかったかも」とか、「私と同じ考え方する人を他人事として文章でみると、やっぱり偏った考え方してるよな」と捉え方を変える助けにもなります。
最近、太宰治の女生徒を読みました。
電車の席とりで意地悪をする人物が描かれていて、嫌な奴って昔からいるし、私だけじゃないんだ、となんだか安心しました。
愛着障害は0か100かの考え方をしてしまうので、すごく嫌なことと、ちょっと嫌なことの区別が付けられるようになると生きやすくなります。
③没頭することができる
ネガティブな気持ちや考えに捉われてしまうシチュエーションは以下の2つが考えられます。
①嫌なことを思い出すきっかけとなる出来事があった
②何もすることがないと、ぐるぐると同じことを考え込んでしまう
①の対処法として、以前記事に書いた、こころのざわざわの落ち着かせ方が役に立つと思います(【愛着障害】こころがざわざわしたときの対処法 - ひょん先生は背中で語りたい)。
②は何か好きなことに没頭するのが良いと思います。
小説にこだわらなくても良いと思いますが、目と頭(聞く読書なら耳と頭)をフルに使い、他のことが入り込みにくくなるため、おすすめです。
また、没頭しつつ①、②の効果も得られます。
※②では認知行動療法的な手法も役立つと思います。気になる方は(認知行動療法について - ひょん先生は背中で語りたい)をご参照ください。
読書はほとんど人を介さずにでき、自分のペースで調節できるため、より安全にできる活動の一つです。
小説は読みやすいもの、読みにくいものの難易度を調節でき、なんとなく疲れたからこの辺でやめる、といったことも自由にできます。
愛着障害やPTSDは完全主義に捉われて頑張りすぎてしまう傾向にありますが、小説はほどほどに楽しめるペースを掴む練習にも適していると考えられます。
まとめ
今日は小説の知らせざる効果、効能について説明しました。
もやもやに耐える力を身に着けたり、物事の捉え方を変え、嫌なことを考える隙間を無くすことにも役立ちます。
おすすめの本
読む本は読みやすいものでいいと思いますが、最近読んでおすすめの本たちをご紹介します。
「月とコーヒー」
一つの話が数ページ程度の短編ですごく読みやすいです。
集中力が続きにくい人も読めちゃうと思います。
おとぎ話みたいなファンタジー感もあります。
簡単な内容で、頭も使わずに読めます。
頭が疲れやすい人にもおすすめ。
「女生徒」
*1:#1 Maja Djikic, Keith Oatley & Mihnea C. Moldoveanu (2013) Opening the Closed Mind: The Effect of Exposure to Literature on the Need for Closure, Creativity Research Journal, 25:2, 149-154, DOI: 10.1080/10400419.2013.783735