ひょん先生は背中で語りたい

精神科医。いじめられ体質から成長中。月曜日更新予定。

【愛着障害、毒親】親とうまくいかない3つの理由

こんにちは。愛着障害、いじめられっ子克服中の精神科医、ひょんです。

今日は、母とお食事したのですが、軽いフラッシュバック起こして、怒ったり泣いたりしました。外来でも、今日の私と同じように親との関係をよくしたいのに上手くいかなくて悩んでいる人はたくさんいました。どういうポイントで反応してしまうのか、何が起きているのか、という情報をシェアするために、傷つきポイントや理由を共有します。また、それぞれに対処法についても書くので、参考になりそうだったら取り入れてみてください。

 

小山座りして項垂れる女性

 

 

①昔も今も親が変わらない(ことが多い)

愛着障害で失われていた安心感の不足、欠如をある程度補われてくると、本来愛情が欲しかった親への愛情希求が始まることが多いです。子供の時に得られなかったものを補おうとする、健康的な反応なのですが、親側が対応できないことが多いです。

簡単に人が変われないという単純な話ではないのです。親側の事情も複雑です。親もその親から同じような育てられ方をしており、以下のような理由から根本的な問題を理解できず、接し方を変えることができないと考えられます。

 

 

  • 十分な受容や共感のある関わりをしてもらったことがないためどうして良いのかわからない
  • 親自身も不安定な愛着であるため傷つきやすく、子育てを否定されることを恐れているため、子供の言い分を認められない
  • 自分の行動が子供の愛着形成を妨げ、傷つけ続けたことを認めることになり、耐えられない
  • 親のその親から、求めていた愛情を受け取れなかったことが多く、それに気付きたくない、愛されていたと思いたいので間違いを認めたくない
  • 子供に愛情深く接することで親のその親との傷つき体験を思い出してしまうので、触れ合いなどは避けたい

 

親を許せ、ということではないのです。許せないなら許さなくても良いです。ただ、なぜか、どうしてか、というのがわからないままだと苦しいので、こういう事情があるのだな、ということだけでも知ってもらいたいです。

 

処方箋

十分な関わりでなかったとしても、親と連絡を取り合ったり関係が続いているのであれば、本当は与えられるはずのものを与えていないわけではなく、愛していて、与えたいと思っていても与えることが難しい場合が多いと思います。その場合、少しだけ変化していることもあると思います。愛したかった、ということだけでも少しは楽になると思います。私は書きながら少し楽になっています。

 

②怒ってしまう

 

愛着が再形成できてくると、親の愛情を求める気持ちというのが一層強くなります。

今までの傷ついた体験をわかってほしい、昔得られなかった安心感を与えてほしい、という気持ちが、怒りとして爆発してしまうことが多々あります。

怒りも受け止めてくれて、きちんと謝ってくれて、これから先の対応も改めてもらえれば愛着の修復も進みます。しかし、先ほど説明したように、親が愛着に気付けない、行動を変えられない事情があるので、訴えていることが満たされません。どんどん怒りが増幅してしまい、最終的に高齢の親にここまで怒鳴り散らしてしまった、と罪悪感を感じてしまいます。今日の私です。親自身も不安定な愛着で責められることの恐怖心から、子どもの傷ついた気持ちに寄り添うよりも、とりあえず謝ったり、この場をなんとかするための行動をとられてしまうため、余計に悲しく、怒ってしまいます。怒ったことを、あんたは怒りっぽいね、昔はこんなじゃなかったのに、私のことが嫌いなんでしょ、といった言い方をされてもっともっと傷ついてしまいます。

怒りたくないのに怒ってしまう、それを理解してもらえず、場合によっては怒ったことを責めらてしまうのです。

 

処方箋

親に対して怒ってしまうのは、心が健康になってきている証拠です。親側の事情で受け入れてもらえないだけです。あなたは悪くないのです。押し殺したり否定するともっと苦しくなります。怒ってしまうその気持ちを受け入れてあげてください。

 

補足:気持ちを自分で受け入れるのに、セルフコンパッションも役に立つと思います

drrpsychiatry.hatenablog.com

 

③理解が得られない、拒絶される

「適切な愛情の注ぎ方」ということがわかっていないから、何年も何十年も愛着が不安定なままであり、ちょっとしたきっかけで親がすっきりとした理解に至ることは稀です。①でも述べたように理解できない、したくない事情というものもあります。

比較的若い患者さんの場合は、親が一生懸命理解しようと悪戦苦闘する様子があるのですが、ある程度大人になってしまった場合は、より理解が得られにくい傾向にあります。「今さらどうしろっていうの…?」とまるでこちらが親をいじめているかのように言われてしまうことがあります。

さらには、過去の傷つき体験を「苦しかった!悲しかった!」と怒りとしてぶつけると、「一生懸命子育てしていたことはわかってほしい」「トラウマのきっかけになるならもう会いません。幸せになってください。」と一方的に連絡を絶たれることもあります。私の母と父のコメントです。

「わかってほしい!」「受け入れてほしい!」がなかなか報われません。

 

処方箋

理解が得られない場合、通院しているのであれば主治医から親へ病状説明してもらったり、診察に同席してもらうのも手です。第三者の、専門職のコメントは本人から説明するよりは理解してもらいやすいことがあり、さらに、どのように接するのが良いのか、ということを見てもらえるというメリットもあります。

私は長い間、親への警戒心の強さから診察に同席を拒否してきましたが、次回受診のとこいは同席してもらうつもりです。私も専門だけど、親に説明はなかなか難しかったし、専門でない場合はもっと難しいと思うので、主治医と話し合って、主治医からの病状説明や診察の同席も考えてみても良いと思います。

 

まとめ

 

愛着障害の人や毒親育ちの人が傷ついてしまう、3つのポイントとその理由、対処法について書きました。

親との関係がうまくいかない、私が悪いのかな、このままうまくいかないまま親と死別してしまうのかな、と不安がたくさんあると思います。親との関係を切ってしまって楽な人は切ってしまって良いのです。親の事情があったとしても、あなたとは関係ないし、無力な子供であったあなたは被害者です。ただ、簡単に切れないから苦しいんですよね。

親に期待すればするだけ傷ついてしまうので、時には外部の助けをかりつつ、自分で自分を満たしていきながら、苦しくならない親との距離の取り方を取る練習をしていくのが良いでしょう。愛着障害で親との関係で悩む時は、①親に期待せず自分で自分を満たす、②親との適切な距離を取る、ことがポイントになります。

距離の取り方で悩んだときに、今日の記事が参考になると嬉しいです。

 

おすすめの一冊

苦しいのは自分だけじゃない、と知ることも心の支えになります。いろんな人の体験に触れたり、どういう風にみんな付き合っているだろうということを知るのに良い本です。漫画+解説(コラム?)でさらっと読めます。