ひょん先生は背中で語りたい

精神科医。いじめられ体質から成長中。月曜日更新予定。

ポリヴェーガル理論 実践編~安心感の育て方~

こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

 

前回はポリヴェーガル理論の理論編についてお話したので、今回は実践編についてお話しようと思います。

 

私が診療業務の中で、愛着障害PTSDの患者さんの治療をしていて、安心感のなさは大きなテーマでどうしたらいいんだろうということをずっとずっと考えていて、現段階ではこれが安心感が鍛えられる信頼できるトレーニングとしておすすめしています。

 

みんなで安心する力を育てていきましょう。

少し長くなってしまったので、とりあえず少し実践していたい方は、安心の育て方のStep1だけしてみて、余裕があれば他のStepにも進んでみてください。

 

 

ポリヴェーガル理論の基本の復習

 

自律神経には大きく、活動を活発にする交感神経系と休息を行う副交感神経系に分けられますが、さらに副交感神経系は人とつながるための腹側迷走神経系とシャットダウンしてしまう背側迷走神経系に分けられます。

ちょっとしたことでパニックになったり、固まったりしないためには、腹側迷走神経系が機能できる範囲を広げ、交感神経系や背側迷走神経系も過剰な活動にならない範囲で適度に働けるようにする必要があります

 

もう一回、基本を復習したい方は過去記事をご参照ください

drrpsychiatry.hatenablog.com

 

安心の育て方

 

Step0:まずは自分の安心感を育てることが大切!

Step1:安心を「学習する」

Step2:怒りを発散する

Step3:嫌な反応を「飼いならす」

 

注意!

全部やろうとすると混乱してしまうので、まずはStep1から根強くトライしてください!

効果は時間がかかるのでやってみてすぐにあきらめちゃダメ!

 

Step0:まずは自分の中の安心感を育てることが大切

 

これを知らないと長い間、名医や名カウンセラーを探す長旅を始めないといけなくなってしまいます。

安心感のない、とても怖い世界で生きてきて、そこから抜け出して、新しい世界への一歩を始めようと頑張って助けを求めてもうまくいかない!ということが起きてしまいます。

 

相手からの安心感に依存してしまうと、関係自体が破綻してしまうことが多いです。

理由については前回記事に記載しているので、気になる方は読み直してみてください(【愛着障害】誰も信頼できず安らげない理由 - ひょん先生は背中で語りたい

 

 

Step1:安心を「育てる」

日々安心感を与えることで、安心できる幅が広がっていきます。

最後にご紹介する「安心のタネ」にはいくつも方法の提案がしているので、そのなかから合うものを実践してみても良いと思いますが、選択肢が多すぎると混乱してしまう人もいるので、まずはお手軽にできるものからしてみると良いと思います。

 

安心を育てるには、背側迷走神経系と腹側迷走神経系のそれぞれを鍛える必要があります。できるものとを1,2個生活に取り入れてみると良いでしょう

順番に取り入れたいなら、人とのつながりを指摘する方が刺激が強く感じる人もいるので、背側迷走神経系から鍛えると良いと思います

 

①背側迷走神経系の鍛え方
背側迷走神経系を鍛えるもの(体の休息モード):
マッサージ、首の後ろに触れる、腎臓(背中の肋骨のあたり)に触れる、腸の動きを意識しながらおなかに触れる

 

心理職や精神科に知識がある程度ある方で、自律訓練法や筋弛緩法、呼吸法などの知識がある方はそうした方法を試してみても良いと思います。

首の後ろや腎臓のあたりを触れることでどう安心感が得られるのかわからないのですが、「安心のたね」にも書かれいるし、私が実際にやってみると落ち着く感じがします。

おそらく、大切なのは、体に優しく触れて、その触れている感覚に意識を向けることなんだと思います。体に優しく触れること自体が安心感につながるし、感覚に意識を向けることも危険な状態ではないことを体に教えて、自分を大切にしようとしているメッセージを送っていることにつながるのだと思います。

 

②腹側迷走神経系の鍛え方
腹側迷走神経系を鍛えるもの(人とのつながるモード):
息を吐く、顔をぎゅっとしたり力を抜いたりする、手をグーパーする、きょろきょろする、自然に触れる、自然の音に触れる、カフェなど人がいる安心な場所にいく、歌う

 

背側迷走神経系は体の休息に関するものでしたが、腹側迷走神経系は人とのつながるモードを高めるものです。表情をよく動かすことや人や周囲とつながることにつながる行動が腹側迷走神経系を鍛えてくれます

 

直接人とつながれるならそれが早いのですが、安心感が十分に育たたない状態であるなら、まずはその予行練習のように腹側迷走神経系を鍛えると良いでしょう。

 

Step2:怒りを発散する

私はキックボクシングをしています( ・´ー・`)写真はイメージです

そもそも危険の多い環境で育つことで理不尽な扱いを多く受けてきており、イライラすることもたくさんあり、潜在的に怒りはかなりありますし、自分の中の安心感が育ってくると、その怒りを表出したくなります。

今まで抑え込んでいた怒りを表出しようとするのはとても健康的なことなのですが、コントロールできる程度に発散することが大切です。

 

運動、プチプチ、歌う、壊れにくいものに怒りをぶつける

 

キックボクシングのミッド打ち相手との距離感になれる練習になるし、パンチしてもキックしてもやり返されないから安心して攻撃できるし、むしろ「ナイスパンチ!」なんてほめてもらえます。 習い事としてしているだけだから、誰かに足を引っ張られることもないし、褒められて素直に喜べます。相手に立ち向かう強さが身に尽くし、純粋なすっきり感や人間関係のすがすがしさもあるので(人間関係は場所によるかもしれませんけど)おすすめです。

 

Step3:嫌な反応を「飼いならす」

〚ライオン、鎖〛〚ライオン 人間〛〚ドーベルマン、大頭飼い〛飼いならす感のある画僧

 

 

 

安心が脅かされる状況はいくつかあって、純粋な安心を感じる力が弱いために危険と感じることがあります。今までのステップでそうした改善があったと思います。

別の危険としては、過去の心の傷がうずいて反応が起きたときに、それに振り回されてコントロールを失ってしまうことです。

「過去を思い出して反応が起きているけど、もうすでに終わったことで、この反応をコントロールできるものである」ということを知る必要があります。

 

以下の2点が必要になります。

 ①反応してしまうパターンを知る
 ②反応が起きてしまったときに落ち着ける対処法を知る

 

①反応してしまうパターンを知る

反応してしまうパターンは「馬鹿にされた」「雑に扱われた、大切に扱われなかった」「意地悪をされた」「自分に価値がないように感じた」などのパターンが多いです。

今まで受けてきた傷でパターンは異なります。

認知行動療法のABCシートなどを付けてみて、思い込みのパターンを知って、その反応がおこるたびに、これはいつものパターンだ、と認識できるだけでも、反応に振り回されずに冷静になれます

うまく説明できなくても、怒りのコントロールできなさがいつもと比べておかしいというだけでも、意識していればいつもの思い込みパターンに入ってないかな?と気付くことができます。

 

「意地悪をしてはいけない」「自分がどうせ何をしてもダメ」という思い込みのパターンで自分を責めてしまうこともあります。

ダメだと思う自分を認めてあげることが必要です。

「自分の悪いところ探し」にはセルフコンパッションも有効でしょう(セルフコンパッションについて - ひょん先生は背中で語りたい

 

②反応が起きてしまったときに落ち着ける対処法を知る

パニックになったときのお助けマニュアルをいくつかご紹介します

家事など日常のことをする
よかったこと、できたことを3つ記録する
ハミング
音楽を聴く
ロッキングチェアやブランコなどの揺れ
カレンダーで日にちや時間を確認(今を意識)
youtubeのほのぼの動画をみる
 

音楽は韻律に富んだものが良いでしょう。

子守歌のようなリラックス効果があります。

激しい音楽はかえって不安を煽るので、クラシックなどが無難です。

歌う、ハミングなどは、人とのコミュニケーションにつかう声帯を刺激するので、結果として安心につながります。

 

患者さんたちがやってみてよかった方法もご紹介します。

質よりもたくさんあることが大切です。

これでダメならこれ!というものを準備しておきましょう。

文章を書く、音楽を鑑賞・演奏する、絵を描く、運動をする、料理をする、犬や猫などのペットと遊ぶ、アロマを焚く、運動をする、丁寧にドリップコーヒーを入れる

書店やコーヒーショップなどの適度な人目のある場所にいく

 

 

まとめ

安心の育て方と、安心を育てた後に生じる怒りの上手な出し方や反応が起きてしまったときの対処法についてご紹介しました。

安心はゆっくりゆっくりした育たたないので、めげずにちょっとずつトライしていきましょう。

まずはStep1が大切です。

私もマスターしきれなてないけど、少しコントロールできずつつあるので一緒に頑張りましょう。

 

おすすめの本

 

「安心のタネ」の育て方

ポリヴェーガル理論の入門編。

安心する力を育ててくれる簡単なトレーニング法を教えてくれているので、合うものを探してみてください。

 

 
「いごこち」神経系アプローチ

「安心のたね」よりも難しい内容を理解したい方におすすめ。

 

【愛着障害】誰も信頼できず安らげない理由

 

こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

愛着障害では安心感が大切です(愛着障害とは - ひょん先生は背中で語りたい)。

しかし、安心できる人間関係のなかにあっても、疑い続け、敵意も感じとりやすいのが愛着障害の特徴です。

安心感が欠けてるだけでなく、安心できる場で安らぐ能力が不足(欠如)しているのです。

 

これを知らずに、安心できる環境だけを求めると、そもそも安心を感じる力がないので頑張っても頑張っても安らぎや安心感を手に入れることができず、余計に傷が深くなってしまうことがあります。

 

安心できる環境にあっても、どうして安らげず、人を信用することが難しいのかを解説します。

解決法についても簡単にお伝えします。

 

 

1.相手が発している安らぎのメッセージに気付けない

「腕組みして思い悩む女性」の写真[モデル:SAKI]

安心感が得られにくい環境にいると、相手が発している安心のシグナルを見落としやすくなります。

思いやりや誠意を感じる機会が少なく、優しさを感じ取るトレーニングがほとんど欠如しているのです。

 

「いやいや、私はとても空気に敏感で誰が味方で誰が敵かすぐわかるんです」、という人は多いですが、実際には、純粋な思いやりや誠意は見逃したり、その瞬間には受け取れていても、後から打算的なものであったと結論づけてしまうことが多いです。

相手が思いやりや誠意を示しても、あなたはそれを感じ取れず、信頼することが難しくなります

 

思いやりには気が付けなくても、傷つき体験やトラウマ体験を想起する出来事には過剰に反応してしまうので、「この人もやっぱり裏切る人だった」という結論になってしまうことが多いのです。

 

2.(無意識でも)相手に敵意を向けてしまうので安心感のある関係が築きにくくなる

「威嚇して縄張りを守る猫」の写真

 

お互いに安らぎを感じ、信頼を寄せることで、安心、安全感が成り立ちます。

猫を想像してみてください。

毛づくろいをしたり、体を摺り寄せたり、ゴロゴロ喉を鳴らしている猫だと癒しを感じますが、威嚇している猫ではどうでしょうか?

一般的に「この場が安全で、周りの人も安全だから、私も安全」という風に安心、安全感を感じています。

どちらか一方が敵意を発していると、この安心モードは成立が難しくなります。

 

長く危険で不安定な状態で生活していると、危険に敏感になっています。

その結果、些細な危険にも気が付き、対処するために、未だに厳重な警戒態勢になっています。

あなたが明確に敵意を感じていなくても「もう傷つきたくない」などの警戒心が、相手への敵意として現れてしまうことが多いです。

少しでも「怪しい」と感じるとそれが露骨に不信感や怒りにつながります。

 

診察医やカウンセラーが安心させたくても、安心のシグナルを感じ取りにくいうえに、厳重な警戒態勢に入っていると、安心モードになりにくく、治療が難航しやすい傾向にあります。

 

3.安心するとかえって不安になる

「悩み、頭をかきむしる男性」の写真[モデル:大川竜弥]

愛着障害の場合、助けてくれる対象が同時に傷つける存在であったため、安心すると警戒モードに入ってしまいやすいです(トラウマ的アタッチメント)

 

相手から癒しや安らぎが得らえると同時に危険も感じ、落ち着かなくなったり、些細なことから相手に不信感を感じてしまい、それを過剰に責めてしまうことがあります。

 

信用していた人が急に信用できなくなる、友達関係など浅い関係ではうまくできるのに恋人や家族に対しては怒りがコントロールできないという形で人間関係が不安定になりやすいです。

自分のなかで安心と不安の混在に気が付かなくても結果的にこのようになることはないですか?

 

4.何か相手とトラブルがあると、あっさり関係を諦めてしまう

 

愛着障害PTSDの場合、極端な白黒思考になりやすいことと、嫌なことや危険なことに打ちのめされてきたことがあまりに多すぎるため、トラブルが生じるとすぐに諦めてしまうことが多いです。

人間関係でもそうですが、治療についても、少しの期間だけ試して効果がなければ諦めてしまうことが多いです。

試している間は一生懸命していますし、怠けたり、楽をしようとしているわけではないのですが、「努力して頑張ってうまくいった経験」や「頑張りを認められた経験」があんまりにも少なすぎるので、「ダメならもうおわり」という考えに行きつきやすいのです。

 

 

愛着障害PTSDの場合、些細なきっかけで治療者に不信感を抱き、ぎくしゃくする瞬間が訪れることが多いです。
治療では、そうしたぎくしゃくすることが起きるかもしれないことは前提で、もし信頼が傷つくようなことがあっても、気持ちを伝え、お互いに和解するという体験が治療として必要になります。

 

まとめ

 

愛着障害の人がどうして安心できる環境にいても善い人ですら信用したり安らぎを感じることが難しいのかについて書きました。

安心のシグナルを受け取る力、相手にも安心のシグナルを与える力の未熟さ、安心と危険は一緒にくるという思い込み、ちょっとでもダメならもうおしまいという絶望の感じやすさが原因となっているのです。

 

処方箋

人から安心感を得ようとすると今日ご説明した4つのいずれかに障ってしまい、うまくいかないことが多いです。

 

相手との信頼関係を築くためにも、まず自分のなかの安心感を築く必要があります。

自分で自分の安心感を充足していき、安心を感じる力を育む意味と、安定した信頼関係を築く際に生じる不安定さを解消する目的があります。

 

ポリヴェーガル理論は安心感について理論的に解釈できます。

安心とはなにか、根本的に安心が感じられない理由を知りたい方は是非過去にご紹介している記事を読まれてください。

drrpsychiatry.hatenablog.com

 

おすすめの本

 

実践編についても記事を作成しますが、先に予習したい方は以下の本がおすすめです。

 

「安心のタネ」の育て方

ポリヴェーガル理論の入門編。

安心する力を育ててくれる簡単なトレーニング法を教えてくれているので、合うものを探してみてください。

 

 

「いごこち」神経系アプローチ

「安心のたね」よりも難しい内容を理解したい方におすすめ。

 

【いじめられ体質改善】上手な自己主張をするためのアサーション

こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

アサーションについて何度か書いていたけど、記事でのご紹介ができてないなかったので、今日はアサーションについてご紹介します。

 

特に虐待歴のある女性は、自分の意見を言うことに対する躊躇や苦手さがあります。

虐待を受けていた当時は、自分の意見を抑えこむことで生存することが出来ていましたが、現在では周りの人たちと石共有できる環境にあるにもかかわらず行動パターンを変えないため、うまく関係を結ぶことができず不適応を起こしてしまっていることが多々あります。

 

また、いじめられ体質の人は、自分が助けを求めていないだけなのに誰も助けてくれないと被害的に思い込みすぎている側面と、実際に自己主張できないのを見抜いていじめっ子が群がっている側面があります。

いじめられ体質を改善するためには、どちらの側面を解決するためにも、自分の意見を言う強さが必要です。

アサーションは強くなりたいあなたのお役立ちアイテムです。

 

どうして自分の意見を言うのが苦手になってしまうのか、アサーションはどのように取り入れたらいいのかについてご説明します。

 

 

1.コミュニケーションの邪魔をしている3つの思い込み

自分の気持ちや考えを話さないことで、不本意なやり取りになったり、気持ちを汲んでもらえないことで相手に悪意があるように感じて被害的に捉えてしまったり、周囲との良好な関係が築きにくくなります。

また、周りの人も、本当はどう思っているのかわからないので、距離を置かれてしまいます。空気を読んで行動してくれるところを利用しようとする人ばかりが集まってきます。

人と上手くするために自分の気持ちを言わずにいるのに、良好な関係性が築けないばかりか、人間関係がますますうまくいきにくくなるのです。

 

自分の気持ちや考えを話せなくなってしまうのには、3つの思い込みがあります。

 

自分の気持ちや考えを言ってはいけない

 

特に虐待を受けた家庭では自分の気持ちや考えというのは否定されやすい環境にあります。

虐待らしい虐待を受けていなくても、周りの顔色をみて言動を変えなければいけない環境で育つと、無意識のうちに自分の気持ちや考えは話さずに、周りに同調しなければいけないと思っていることが多いです。

そのため、自分の気持ちや考えを話すことに抵抗を感じたり、あんまりにも抵抗が強い場合は自分自身ですらそれに気が付いていないこともあります

 

自分の気持ちや意見を言えば関係が壊れてしまう

 

自分の言葉を話さないようにして周りに馴染んで生き延びてきた人たちは、自分の気持ちや考えを話すということにとても高いハードルを感じることがあります。

また、実際に気持ちや考えを話しても否定され続けた人は、話しても無駄だと感じてしまったり、トラウマ体験や傷つき体験と結びついて、また攻撃されてしまうと感じている人もいます。

実際には、あなたに不快にさせる言動がなくても、何を考えているのかよくわからないと人はあなたと親密になれないと判断して距離を置かれてしまいます。

あなたが考えていることがよくわからないことから誤解が生まれ、責められることもあります

あなたとの関係を大切にしたいと思っている人は、あなたが考えていること、感じていることを知りたいと思っていますし、きちんと気持ちを話したほうが良好な関係は築けます。

あなたが嫌だと思ったことを伝えて離れる人は、大切にすべき人間関係ではありません。むしろ手放すべきです。

 

相手がわざと気付かないふりをしているという妄想

 

言わなくてもわかっているはずなのに、相手が気付かないふりをしているのだから、自分が何か言ったって無駄だろうと思っているパターンもあります。

実際にはあなたの意図が汲めていないことはあなたが思っているよりも多いものです。

また、実際に無視をしていたとしても、わざわざ言うことで相手も逃げられなくなるので、なにかしらのレスポンスはもらえます。

 

2.アサーションのスキル

自分の意見を言いたいと思っても言えないのは、どうやって言ったらいいのかスキルを知らないし、練習も足りないからです。

実際にアサーションを行うためのスキルと練習のステップをお伝えします。

 

アサーション

全ての人に「自他の権利を侵さない範囲で自己表現をして良い権利」があります。

12のアサーション権も読んでみてください。

これから実践するあなたを励ましてくれると思います。

12.のアサーティブでなくても良い、というのも良いですよね。

アサーションは無理に全部する必要もなくて、言いたいときだけ、できる範囲だけで良いのです。

 

12の権利

 

1.私には、日々の役割にとらわれず、一個人として自分の要求を伝え、自分で優先順位を決める権利がある。

2.私には、賢くてスキルがある対等な人間として扱われる権利がある。

3.私には、自分の感情を認め、表現する権利がある。

4.私には、自分の考えと価値観を表明する権利がある。

5.私には、自分の為にはい・いいえを判断して伝える権利がある。

6.私には、失敗する権利がある。

7.私には、意見や考えを変える権利がある。

8.私には、分からないことを分からないと言う権利がある。

9.私には、欲しいものややりたいことを求める権利がある。

10.私には、人の悩みについて責任を負わない権利がある。

11.私には、人の評価に頼ることなく、周りと接する権利がある。

12.私には、アサーティブでない自分を選択する権利がある。

引用:https://www.direct-commu.com/shinri/asa/

 

DESC法

 

アサーションはDESC法に当てはめるとやりやすくなります。

 

Describe(描写する):客観的に起こった出来事を伝える

Express(説明する):自分の意見や考えを伝える

Suggest(提案する):問題を解決するためのアイディアやしてほしいことを伝える

Choose(選択する):提案を受け入れた場合と受け入れなかった場合の結果や選択肢を伝える

 

たとえば

 

Describe(描写する):「最近、待ち合わせに30分くらい遅れてくることが続いている」

Express(説明する):「私は待っている時間に落ち着かなくなるし、来ないんじゃないかって不安に感じる」

Suggest(提案する):「私はあなたに遅刻しないでほしいし、遅刻するなら連絡が欲しい」

Choose(選択する):「あなたが時間通りに来てくれたらその日の予定がスムーズに進むし、遅れるとしても連絡があれば安心できる」

 

というように当てはめてはなします。

交渉上手な人はこのパターンをよく使っていませんか?

 

ポイント

 

ポイントが2つあります。

 

ポイント1:Iメッセージで伝える

ポイント2:拒否の度合いや相手との関係性も勘案する

 

ポイント1:Iメッセージで伝える

 

あなたがこうすべきなのに!と言いたい気持ちになっても、それを伝えてしまうと感情的に衝突してしまいます。

あくまで客観的に伝える必要があります。

「あなたは~するべき!」ではなくて、「わたしは~してほしい、なぜなら~と感じるから」という文面にすると伝わりやすいです。

 

ポイント2:拒否の度合いや相手との関係性も勘案する

 

どうしても嫌なことなのか、少しくらい妥協しても良いことなのかで断り方がかわります。

また、家族などの関係を大切にしたい人物なのか、見ず知らずのしつこい営業マンなどの関係を築きたくない相手なのかでも、断り方が変わります。

DESC法でした提案を断られることもありますが、大切にしたい関係なら、相手の気持ちも受け入れながら自分の事情を説明し、可能であれば妥協案を探すことになるでしょう。

関係を築きたくない相手なら最初からきっぱり断ってしまっても良いでしょう。

 

DESC法のショートカット!

DESC法をもっと簡略化すると、「(客観的事実)について私は~と思うから~してほしい。」がいえれば6,7割はアサーションが達成できています。もし必要があれば妥協案を提示をすれば8,9割は完成します。

より丁寧に付き合いたい相手に伝える大切なことはDESC法をもとに伝えたほうが誤解は招きにくいですが、店員さんや営業マンなどその場限りの関係であれば、「~してほしい」「~しないでほしい」だけでもOKです。

 

大切なことや、伝えるのに強い不安を感じるのであればDESC法でセリフを準備しておくと良いでしょう。

 

3.アサーションのステップアップ

 

1日1回実践できるとアサーションスキルは身についていきます。

できる範囲でトレーニングしていきましょう。

 

いきなり家族や友人の大切な頼みごとを断るのは難易度が高いと思うので、個人的なスケールでの難易度も示します。

できそうなものからやってみると自信が付けられると思います。

人によって順番は違うと思うので、オリジナルな順番に置き換えてください。

 

Level1.

お店の人へちょっとしたお願い 

例)商品の場所をさがしてもらう、アイスティーの氷なしにしてもらう

 

Level2.

お店の人へ面倒なお願い 

例)商品を買わずに両替だけしてもらう、メニューにないものを注文する

 

Level3.

友人、知人にお願い 

例)相談にのってもらう、車に乗せてもらう

 

Level4.

友人、知人に意見する 例)話題を変える、反対意見を言ってみる

 

Level5.

知らない人にお願い 例)電車で座席においているカバンを避けてもらう、道を尋ねる

 

Level6.

お店へのクレーム 

例)嫌だと感じたことを伝える、商品やサービスについての意見を伝える

 

Level7.

知り合いに嫌なことを言う 

例)やめてほしいことを伝える、引き受けていたけど本当は嫌だと感じていた頼みを断る

 

まとめ

 

今日はアサーションについて説明しました!

是非実践して、コミュニケーションスキル向上に役立ててくださいね!

人付き合いのもやもやを減らせるし、自分も相手も大切にできるつながりが増えていきます。

やってみるまでが恐いし、最初は不器用にしかできないかもしれませんが、慣れればスムーズにできるようになります。

めげずに頑張ってください!

 

おすすめの1冊

自分の意見を言うことが苦手な理由と、自分の意見を言うためのアサーションのスキルについてご紹介しました。

もっとアサーションについて知りたい方は、本を読んで勉強してみてください。

「マンガでやさしくわかるアサーション」はストーリーも交えつつわかりやすい内容になっていておすすめです。

 

【愛着障害】誰も教えてくれない!楽に生きるための暗黙のルール


こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

愛着障害の回復過程で、これまで気が付かなかった健康な人達の暗黙のルールというのをいくつか見つけました。

そのルールは明文化されたものでなく、健康的な家庭で「なんとなく」伝えられていくものです。

不安定な愛着で育った愛着障害の人はその存在を知らないがために、生きることに苦戦してしまいます。

 

今日は楽に生きるための暗黙のルールについてお話します。

今回はそれぞれのルールを新たに自分の生活に取り入れるための処方箋も紹介しています。

 

 

1.人は「誰でも」価値がある存在で、嫌なことを嫌だと言っていい

 

「全然話にならないとダメ出しする女性」の写真[モデル:土本寛子]

 

多くの愛着障害の人は、愛情を十分に受け取れなかったことから、自分の存在価値に疑問をもっています

また、悲しみや怒りの感情が否定され、我慢するように強いられていることも多いです。

そのため、感情を表出することに対する躊躇があり、思いや意見があっても必要以上に空気を読んで我慢したり、自分の気持ちに蓋をしすぎて自分でも感じていることや考えていることがわからなくなっていることがあります。

自分に価値がないと思っているため、ますます嫌なことを嫌だと言えず、怒ってはいけないと思っています。

もしくは、相手に過度な攻撃性を向けることがあります。

行動としては真逆ですが、心の動きとしては、自分に価値がないと感じているため、怒りなどの感情を我慢するか爆発しやすいかのどちらかに陥りやすいです。

 

愛された経験がなくて、自分に自信がなくて、人より秀でたことがないと自分で感じていたとしても、「誰でも」価値ある存在なのです。

当たり前に感じますが、自分に自信がないと当然のように自分だけは価値がないと思っていることが多く、意外と盲点です。

そして、嫌なことは嫌だと言っていいのです。

 

処方箋

 

自分は価値がないし嫌だと言ってはいけないというのは半ば呪いのような妄想で解くのはなかなか難しいですが、根気強く付き合うことで自らの呪縛から解放されることができます。

あなたが価値ある存在であると自分で信じれるまで何回でも繰り返し伝え、嫌だという練習を繰り替えして乗り越えることができます。

 

アサーションはまさしく嫌なことを嫌だという技術になります。

まだ記事で紹介できていないので、本を参考に実践してみてください。

 

 

2.健康な人との違いは能力でなく『社会スキルの多さ』

たくさんのカードのなかから行動を選ぶことができる

周りをみていると人付き合いが上手に感じます。

自分に人付き合いの能力が欠けているようにも思ってしまいます。

しかし、実際には社会スキルを知っているか知らないかの違いでしかありません。

 

健康的なに育った人は、健康的な大人たちのコミュニケーションをみて学び、実践する機会にも恵まれているので、上手な言い回しや身の振り方を知っています。

その一方で、不安定な愛着のもとで育った場合、健康的なコミュニケーションを見る機会が少なく、社会スキルを知る機会がなく、練習もできず、身に着けることができなかったのです。

精神科の治療では、当たり前にみんながしていることを、文章化して治療法と提唱しているものが多いです。

認知行動療法(物事の捉え方の変え方のアプローチ)だってアサーション(1.で紹介した嫌なことを嫌というスキル)だって、普通にみんながしていることを治療枠に当てはめているだけです。

 

処方箋

 

上手に人とやっていく方法を知っているか知らないかの違いです。

世渡り上手は単純にその方法を「知っているだけ」なのです。

あなたも社会スキルを知って練習できれば身に着けることができます

 

手始めに認知行動療法認知行動療法について - ひょん先生は背中で語りたい)やアサーション(1のリンクの本)のスキルを試してみてはどうでしょうか?

 

3.人の話はきちんと聞かなくても良い

愛着障害の人は共感性が高い人が一定数おり、人の話をきちんと聞こうとする気持ちが強いです。

気持ちを聞いてもらえなかった経験から、他の人に同じようにしたくない思いがあるのでしょう。

逆に話を聞いてもらえないと大切にされていないと思うことが多いです。

自分が一生懸命話を聞いているので、聞いている素振りが乏しいと大切にされていない感覚に陥りやすいのです。

 

ただ、多くの人は「自分都合」がデフォルトモードなのです。

基本的に話半分だし、相手の立場に立たない勝手な解釈をしています。

 

処方箋

 

自分都合を要素でわけると、以下の2つに分けられます。

 

①相手の言葉は適当に聞き流す

②自分の解釈で理解する

 

①を行うためには、相手の気分や考えていることは、こちらでどうしようもないことを知る必要があります。

相手を不快にさせないようにきちんと話を聞こうと考えやすいですが、きちんと聞いていても聞いていなくてもあまり快、不快に影響はありません。

そこまでの会話の精度を多くの人は求めていません。

むしろ正確さにこだわりすぎてしまうことで趣旨が掴めなくなり、「話を理解していない、話を聞いていない」という評価につながりやすくなります。

「ふーん」とか「へえ」くらいの態度がちょうど良いのです。

 

何気ない棘のある一言や嫌味が頭から離れないときは、「それって本当?」「100%言い切れる?例外もない?」「その人一人だけの意見じゃないの?」という批判的な視点で考えてみてください

 

②を行うためには、自分の感情や意見を持つことを自分自身に許す必要があります。

ここでもあなた自身に価値があるんだということを思い起こしてください。

まずは、自分自身の感情や考えを認める必要があります。

思ったことや考えたことを日記につけてみると良いでしょう。

カウンセリングも、自分の思いや考えを口に出す練習になるので、カウンセリングも良いと思います。

 

 

補足:初心者は上手にできなくて当たり前

 

 

これは健康な人も知らないルールです。

逆に健康な人は知らないから、頑張ろうとする愛着障害の人を傷つけることが起きます。

 

自分の意見を言う、気持ちを伝えるにしても、健康的な人は小さい時からトレーニングを積んでいます。

しかし、愛着障害の人たちはトレーニングがつめていません。

頭でわかっても、実践経験がないのです。

自転車の乗り方が本を読んで身に着けられますか?

転んだりしながら感覚を掴むことで自転車は乗れるようになります。

 

自分の意見を言いたいのに、その場になると結局言えないことがあります。

言おうとすると強く言いすぎることもあると思います。

だって仕方ないんです、初心者だから。

 

たくさん失敗しながら、身に着けていくしかないんです。

 

特に、今まで従順だった人が変わるとなると周囲から抵抗も受けるでしょう。

「意地悪になった」とか、適格にあなたが嫌がる表現をして押さえつけようとする人もいるかもしれません。

でも、初心者なんだから、最初から上手にできなくて当然ということは知っておいてください。

何回も失敗すると思います。

でもトライし続ける自分をほめて、次のチャンスもあげてください。

あなただけはあなたの味方でいてください。

 

まとめ

今日は愛着障害の人が知らない、楽に生きるための暗黙のルールについてご紹介しました。

3つの項目に共通して、あなたは価値がある存在だ、ということを知って、それを信じるトレーニングが必要です。

そして、「嫌なことを嫌だと言って良い」、「スキルを身に着ければ上手な人付き合いができる」、「人の話をほどほどで良い」といった暗黙のルールを知り、新しいルールでの生活を実践してください。

人付き合いの苦しさが減り、生きやすくなります。

メンタルにも役立つ!知られざる小説の読書効果

こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

今日は小説の読書効果について説明します。

教養だけでなく、メンタルにも役立ちます!

愛着障害PTSDの生きずらさにも効果を発揮します。

 

①もやもやに耐える力を身に着ける

「トップセールスマンの自信に満ちた顔」の写真[モデル:大川竜弥]

返事を待たされたり、結果がすぐに出ない時に落ち着かなくなりませんか?

または、コミュニケーションで引っかかることがあるけどはっきり確認もできずにもやもやしてしまうことはありませんか?

もし、落ち着かなくなったりもやもやしやすいなら、不確実性の耐性(不確実な出来事に耐える力)が低いのかもしれません

 

 

特に、愛着障害PTSDではトラウマ的出来事を回避しようとするシステムが強く働き、0か100かの思考に捉われ、グレーな状態に耐えることが難しいことが多いです。

そして、不確実な出来事は、幼少期に受けた暴力的な事柄を想起してしまうため、相手に対する不信感や攻撃性を募らせてしまい、人間関係にダメージが生じることもあります。

 

 

小説を読むことで、この不確実性の耐性が身に付くことが研究*1でも示唆されています。

実用書と異なり、小説は目的がなく、結末も宙ぶらりんであるため、不確実性の耐性が身に付くのではないかと思います。

小説を読むことで、もやもやに耐える力を鍛えましょう。

 

②自分以外の人の経験や行動パターンを知ることができる

「何かを閃いた外資系サラリーマン」の写真[モデル:Max_Ezaki]

人は誰しも自分というものに捉われやすい傾向にありますが、特に愛着障害では、健康的な人間関係を体験することができなかったため、偏った見方をしてしまうことが多いです。

被害的に捉えすぎてしまったり、自責的に考えすぎる傾向にあります。

ちょっとした嫌なことも、酷い悪意にさらされたように感じてしまいやすく、人を避けたり攻撃的になりやすい要因にもつながります。

これも人間関係がうまくいきにくい要因になります。

 

 

小説はいろんな人の考え方や行動パターンを知ることができます。

たくさんの人と関わることでこれらを習得することもできますが、人と関われば関わるほど、すれ違いが起きて傷つくこともあります。

その点、小説はあなたの意見を否定や非難をすることがなく、安全に他人(世の中一般も含めて)の考え方、行動パターンを知ることができます

 

 

こういう見方もあるよね、とか、こういう言い方をしてもいいんだ、という気づきがあります。

「すごく悪意を感じたけど、同じように小説の登場人物が行動している感じをみると、そこまで悪意はなかったかも」とか、「私と同じ考え方する人を他人事として文章でみると、やっぱり偏った考え方してるよな」と捉え方を変える助けにもなります。

 

最近、太宰治の女生徒を読みました。
電車の席とりで意地悪をする人物が描かれていて、嫌な奴って昔からいるし、私だけじゃないんだ、となんだか安心しました。

愛着障害は0か100かの考え方をしてしまうので、すごく嫌なことと、ちょっと嫌なことの区別が付けられるようになると生きやすくなります。

 

③没頭することができる

 

ネガティブな気持ちや考えに捉われてしまうシチュエーションは以下の2つが考えられます。

①嫌なことを思い出すきっかけとなる出来事があった

②何もすることがないと、ぐるぐると同じことを考え込んでしまう

 

①の対処法として、以前記事に書いた、こころのざわざわの落ち着かせ方が役に立つと思います(【愛着障害】こころがざわざわしたときの対処法 - ひょん先生は背中で語りたい)。

 

 

②は何か好きなことに没頭するのが良いと思います。

小説にこだわらなくても良いと思いますが、目と頭(聞く読書なら耳と頭)をフルに使い、他のことが入り込みにくくなるため、おすすめです。

また、没頭しつつ①、②の効果も得られます。

※②では認知行動療法的な手法も役立つと思います。気になる方は(認知行動療法について - ひょん先生は背中で語りたい)をご参照ください。

 

 

読書はほとんど人を介さずにでき、自分のペースで調節できるため、より安全にできる活動の一つです。

小説は読みやすいもの、読みにくいものの難易度を調節でき、なんとなく疲れたからこの辺でやめる、といったことも自由にできます。

愛着障害PTSDは完全主義に捉われて頑張りすぎてしまう傾向にありますが、小説はほどほどに楽しめるペースを掴む練習にも適していると考えられます。

 

まとめ

 

今日は小説の知らせざる効果、効能について説明しました。

もやもやに耐える力を身に着けたり、物事の捉え方を変え、嫌なことを考える隙間を無くすことにも役立ちます。

 

おすすめの本

 

読む本は読みやすいものでいいと思いますが、最近読んでおすすめの本たちをご紹介します。

 

 「月とコーヒー」

一つの話が数ページ程度の短編ですごく読みやすいです。

集中力が続きにくい人も読めちゃうと思います。

おとぎ話みたいなファンタジー感もあります。

簡単な内容で、頭も使わずに読めます。

頭が疲れやすい人にもおすすめ。

 

 
 

「女生徒」

太宰治の生い立ちを考えても、愛着障害があったと考えられます。
繊細で傷つきやすくて上手に生きることができない、愛着障害の傾向を持つ登場人物が多く、他人事なので(しかもフィクション)、「それちょっと考えすぎじゃない?」とか、「周りが悪いんじゃなくて、被害的な考え方に捉われてるからうまくいかないだけじゃない?」と冷静に突っ込めます。
女性を主人公にした短編小説集で、他の話のなかでも厚かましい人も出てきます。
「それ嫌って言ったらいいだけじゃん!」と他人事なのでアドバイスまで思いつきます。
愛着障害の人、読んでみて感想教えてほしい…。
 

*1:#1 Maja Djikic, Keith Oatley & Mihnea C. Moldoveanu (2013) Opening the Closed Mind: The Effect of Exposure to Literature on the Need for Closure, Creativity Research Journal, 25:2, 149-154, DOI: 10.1080/10400419.2013.783735

精神科医が解説!もののけ姫から学ぶ、怒りのコントロール術

こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

もののけ姫をこの間見ていて、「これって怒りのコントロールをテーマにした物語なのでは?」とふと思いました。

タタリ神ってもう、憎しみそのものです。

アシタカは呪いとして憎しみを引き継いでしまいますが、最終的に怒りや憎しみをコントロールすることに成功しています。

今日はもののけ姫から、怒りのコントロール術を考察、解説します。

 

愛着障害PTSDでは強い憎悪を抱くことがしばしばありますが、回復、克服の過程で怒りと上手に付き合っていく必要があります。

より良い人間関係を築くためにも怒りのコントロール術は必須スキルです。

 

 

1.怒りは生きるために必要な感情

 

 

怒りは「悪い」感情であると認識される傾向がありますが、生きていくために怒りは必要です。

 

生きるために必要な怒りは2種類あります。

  • 危険から身を守るための怒り
  • 信念や正義のための怒り(義憤)

 

安全が脅かされた時は自分の身を守る必要があります。

怒って反抗しなければ、尊厳を踏みにじられたり、命さえも奪われる可能性があります

敵に狙われた時のアシタカも、呪いが発動しても手の動きはコントロールできています。

エボシに対抗しようとするモロや乙事主(タタリ神化前)もおどろおどろしい姿ではなく、真向な人物像として描かれています。

 

怒りは強いエネルギーを引き起こします。

瀕死の山の神をタタリ神として猛威を振るわせるほどのエネルギーです。

乙事主がタタリ神化したときに、あまりに高エネルギーなため、サンはとても苦しがっています。

怒りはコントロールできないほどの強力なエネルギーをもたらすのですが、信念や正義のための怒りはコントロール可能なエネルギーとして利用できるのです

サンとエボシが一騎打ちをして、アシタカが止めに入るシーンがありますよね。

あの時に呪いが発動していますが、アシタカはその力をコントロールして、自分の正義に基づいた行動がとれています。

対照的に、そのシーンの少し前に、アシタカがエボシに切りかかろうとする自分の腕を必死に抑えている場面があります。

「エボシのせいでこんなひどいことがおきている!こいつを殺したい!」という私的な怒りの描写では、コントロールに難航し、怒りを抑えるのにかなり苦労しています。

 

「いじめっ子を許さない!懲らしめてやる!」という怒りは本人も周りもひどく消耗しますが、「いじめらた経験から、いじめられっ子を救うために戦いたい」という信念や正義に基づくエネルギーに変換できれば、生きがいも生まれそうですよね。

(実際に意識して変えるのは難しいです。この辺の解説は最後にします。)

 

このように、危険から身を守る怒りと信念や正義のための怒りは、自分の身を守り、ポジティブな生きるエネルギーとなります。

 

2.怒りを正しく捉えられなくなるとタタリ神になる

 

 

もののけ姫から怒りを紐解くときにはタタリ神についても触れなければいけません。

タタリ神化を回避したアシタカとモロ、タタリ神化したナゴの守と乙事主の違いはなんでしょうか。

 

いずれの人物もエボシに対して個人的な恨みを背負っています。

ただし、それは自分の身に危険が及ぼされているため、正当な怒りでした。

タタリ神化の分岐点は、自分自身の怒りの本質をとらえられているかどうかです。

 

タタリ神化したナゴの守も乙事主も、エボシに対する恨みを強く抱いています。

しかし、怒りの対象はそれだけではないと考えられます。

「イノシシの誇りだからね。最後の一頭になっても突進して踏み破る。」と、乙事主の戦闘の前にモロは言っています。

しかし、ナゴの守も乙事主も、瀕死の状態で一頭だけ森のなかをさまよっているのです。

つまり、どこかで仲間が全滅した状態で一頭だけ生き延びてさまよっている状態なのです。

このように「仲間を見捨てた自分への怒り」もあると思われますが、タタリ神化直前でも、そんなことは一言も口にせず、エボシを倒すことのみに言及しています。

自分自身に対する怒りに耐えきれず、自分の気持ちに蓋をしてしまったのです。

その結果、怒りが肥大してタタリ神化していると考えられます。

自分の気持ちに強力な蓋をした結果、サンの冷静な助言も聞き入れることができなくなり、事態はさらに悪化します。

 

ナゴの守と乙事主の最後の場面の違いも興味深いです。

ナゴの守は恨み言を残して不気味な姿となり死んでしまいます。

しかし、乙事主は何も言葉を発さずに、静かに目を閉じます。

この差はその場にシシ神がいたのか、いなかったのかの違いだと思います。

シシ神は生と死、いわば秩序を司る存在です。

乙事主を見つめることで、事実をありのままに見せていたのではないかと思います。

シシ神を見たときに乙事主は怯えているように見えるし、本当に怯えていたのかもしれません。

しかし、目を見開き、やすらに目を閉じるシーンと続くことを考えると、乙事主はエボシに対する肥大化した怒りから解放され、仲間を見捨てた自分を責める気持ちに気が付き、さらに、それは乙事主が悪かったわけではなく、乙事主も精一杯頑張ったしどうしようもなかったことに気がついたのではないかと思います。

気づきが得られた乙事主とは対照的に、ナゴの守は恨みと関係ない人間たちを襲い、「急にやってきた理不尽な怖い存在」として最後を遂げています。

 

日常生活においても、過去の嫌な出来事に結びつけてしまっていたり、怒りで別の感情を隠してしまっているため偽物の怒りの感情が生じて、それに振り回されやすくなります

すっきりしない怒りには、別の感情や思い込みが隠れているかもしれません。

 

3.思い込みや執着を手放せば怒りのコントロールは神レベルに

 

キャラクター別に怒りのコントロールレベルを分けることができます。

 

 

怒りのコントロールレベルの違いは、周りの出来事の捉え方にあります

おもしろいことに、怒りのコントロールレベルが低いと野生動物的だし、レベルが高くなると人間味あふれる達人レベルになり、さらにレベルをあげると神レベルになります。

 

狂人レベルは、被害的な世界観に固執しています。

タタリ神化する直前の乙事主は、「黄泉の国から戦士たちが帰ってきた」と、妄想的な発言もしています。

先頭前の理性的な乙事主であればこのような考え方はしなかったはずですが、狂人レベルになると被害的な世界観に捉われ、理解力が下がり、妄想的な世界に入り込んでしまうのです。

愛着障害PTSDのフラッシュバックはこの状態に入りやすいです。

怒り狂っている本人もつらいのですが、そのつらさは理解されにくいです。

周囲からみると、「よくわからない迷惑な人」でしかなくなります。

 

凡人レベルは、妄想までいかないけど、思い込みが強いです。

いい人、悪い人の判断で人を見ています。

サンの場合は悪い人にはぶつかっていくけど、現実的な世界では過剰に避けようとする行動もあるでしょう。

 

達人レベルは、妄想や思い込みがほとんどなく、人と穏やかにつながることができます。

信念や正義による健康的なエネルギーも持っています。

自分の感情や考えに捉われずに、「くもりない眼で物事を見定め」、エネルギッシュさも兼ね備えています。

無用なすれ違いも起きず、自分の嫌なことも伝えることができ、適切な人間関係を築くことができます。

また、そのような人は周りに安心感を与えるため、自然と人も集まってきます。

 

神レベルになると、達人レベルでもっている理想像というものも手放しています。

シシ神は、例外的に命と首を奪われた時に激怒していますが、それ以外ではほとんど感情を表にすることがありません。

神レベルといいつつも、シシ神は体を持っていたので、命を奪われることに反応するのは自然なことでしょう。

何にも動じることなく、悟りを開いている状態です。

狂人レベルから、達人レベルまで、妄想や思い込みを捨てることで他者とのつながりを強くしていたのですが、神レベルでは一人での世界で完結しています。

自分一人でも安定した世界を維持することができるため、まさに孤高という言葉がぴったりです。

こころに余裕があり、傷をおったアシタカを治してあげたり、タタリ神化した乙事主の苦しみを取り除いてくれていますが、特別な存在はいません。

 

思い込みや執着を手放し、ありのままを見て感じることができれば、怒りのコントロールレベルをあげることができます

達人レベル、神レベルのいずれかが多くの人の理想的な姿でしょう。

正義に燃える人間臭い感じの達人レベルがいいのか、超越的な存在の神レベルがいいのか、人の理想はそれぞれありそうですね。

私は人間らしい達人レベルでいたいなと思います。

 

神レベルは仏教の悟りの状態で、目指すにしても難易度はとても高いです。

まずは達人レベルを目指し、その達人レベルのうちの数%か、それ以下の確立で神レベルになれるかどうか、というところでしょう。

 

ちなみにエボシやジゴ坊は、強い感情をもたずに目標達成だけを目指すことができるサイコパスタイプと思われます。

強い感情を持つ人がこのタイプに変わりたいと思っても、感情の揺れを小さくすることは困難なので、怒りをうまく飼いならすことを考えたほうがよいでしょう。

怒りを見て見ぬふりをすると、かえって怒りが増大し、乙事主のようにタタリ神化していしまいます。

強い感情を飼いならすためには、自分の中も外もありのままに見るステップを踏んで、達人レベルや神レベルに達して、サイコパスタイプに近い状態を目指すことが現実的です。

 

まとめ

 

今日はもののけ姫から学ぶ、怒りのコントロール術について解説しました。

怒りは悪いものではなく、生きるために必要なものです。

怒りの本質を見間違い、ないものにしたり過小評価したりすると、怒りは暴走してしまいやすくなります

タタリ神化する前の乙事主は達人レベルにいたと思われますが、それでも、怒りに蓋をすることでタタリ神化し、狂人レベルにまで怒りのコントロールレベルが下がっています。

内側の世界も外側の世界もありのままを見ることで、より高度な怒りのコントロールができるようになります

 

処方箋

 

まずは、自分に起きていることを見定める必要があります。

マインドフルネスが有効でしょう。

ありのままを受け止めるトレーニングになります。

 

個人的な怒りから義憤へ変えることで生きるエネルギーに変えられることをお話しましたが、意識して変えることはかなり困難です。

まずは、怒りを自分の中だけでも過去の記憶として終わらせる必要があります。

PTSDまで至っているなら専門治療が効果的です。

一人で完結した手法としては、過去のトラウマ記憶を書き綴る、録音するといった方法も一定の効果がありますが、フラッシュバックが起きたときの対応が難しいといった問題もあり、第三者がいたほうが記憶の整理も進みやすいので、主治医がいるなら相談してみると良いでしょう。

 

特に愛着障害PTSDの患者さんでは、怒っているときに自分自身へも怒りが向かっていることがよくあります。

自分に八つ当たりしてしまっているため、怒りが長引きやすくなります。

自分に対する自信のなさ、自分の価値の不確かさから無意識に自分自身に八つ当たりしてしまっていることが多く、本人も気が付きにくい傾向にあります

自分の価値を自分で信じられるように、セルフコンパッション(セルフコンパッションについて - ひょん先生は背中で語りたい)など自分を受け止めるスキルを強化したり、自分の好きを満たしてあげること(好きは大切という話 - ひょん先生は背中で語りたい)で、自分自身を価値ある存在だと信じさせてあげることが有用でしょう。

 

おすすめの一冊

 

怒りのコントロール術について、アンガーマネジメントも参考になります。

いくつかスキルを試してみて、自分にあうものを常備しておくと、日々のイライラとの付き合いも上手になっていきます。

 

【愛着障害】親に診察同伴してもらった結果

こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

 

愛着障害の親との関係で理解が得られないときは、診察に同席してもらうのも手だというお話を以前しました(【愛着障害、毒親】親とうまくいかない3つの理由 - ひょん先生は背中で語りたい)。

専門的な知識があっても、実際に自分の親に説明して理解を得るとなると難しいのです。

専門的な知識を持っている第三者が介入したほうがうまくいきやすいです。

実際に私の母に診察に同席してもらったので、そのことについて書こうと思います。

 

愛着障害についての知識はいろんなサイトや本から得られると思うのですが、みんながどう向かい合っているかという情報を得られる場というのは限られています。

私の体験と、精神科医の視点から思うことをみなさんと共有したいと思います。

 

 

1.親の理解が得られやすい時期

 

愛着障害の患者さんを何人も診てきました。

親との橋渡しもしました。

以下の3つの時期が親の理解が得やすく、変化するための親の頑張りがみられます。

 

1.親の頑張り度合いが大きいのは未成年の時
 ⇔大人になると「もう大人だし、今更…。」という扱いになりやすい

2.不安定な愛着により自己破壊的な行動が出現し始めて、うろたえてる時
 ⇔不調や問題行動が慢性的にが持続すると、諦めや偏見が強まってしまう

3.精神科の通院を始めた時
 ⇔時間がたちすぎると、「今更」の壁を突破しにくくなる
 

1~3の条件をすべて満たしている場合、変化は見られやすいです。

親自身も愛着障害がある場合がほとんどなので、一朝一夕に解決されませんが、変わろう!という姿勢をみせてくれます。

 

私の場合、一番最初の不調や問題行動というのは、中学高校に頻回にリストカットを繰り返したことです。

しかし、無理やり頑張ってやめたことで、問題がなくなったように扱われてしまい、2のタイミングを逃しています。

大学時代に精神科受診につながりました。

受診当初は両親とも付き添いに来てくれていましたが、両親に対する不信感から同席してほしくない気持ちが強く、3のタイミングも逃しています。

同時に、成人していたものの、大学生の時の話なので、1のタイミングに間に合えたかもしれないけれど、それも逃しています。

 

1~3すべてを満たさない、難易度高めの時期に、母に診察同伴してもらうことになったのです。

 

2.診察に同席してもらうことになった経緯
 ~愛着障害克服の過程で怒りが噴出しやすくなる

 

愛着障害の克服の過程で、子ども時代の怒りが噴出しやすくなります。

子ども時代の出来事がどのように今の自分に影響を与えているかということの理解が深まり、抑圧してきた感情のブレーキも外せるようになるからです。

トラウマ体験、傷つき体験の元になっている親へ怒りをぶつけることは、愛着障害の治療がうまくいってるから起きることなのです。

 

ここで親が怒りを受け止められると、子どもはだいぶ回復できるのです。

しかし、親自身も傷つきやすさがあるため、正面衝突になるか、回避的になるかいずれかの反応になりやすいです。

 

私の場合も、過去の傷について言及することが増えました。

父は返事をくれなくなりました。

母は、連絡をとってくれるけど、「子供は記憶違いが多い」「今まで仲良くやれていたのに、ひょんは変わった」「私のことが嫌いだからそんなこと言うのね…」といった出来事を否定したり、私の反応を非難するようになりました。

 

「一人で頑張っても理解が得られない」
「このまま、理解が得られないまま、両親は死んでしまうのか…」

 

という不安を抱え始めました。

 

ある日の母とのやりとりで、

「だいたい、私のことなんでどうでもいいやん!」
「診察についてきて、私のこと知ろうともせんやん!」

と怒っていると(たぶんフラッシュバック)、

「昔、診察についていこうとしたらついてこないでっていうからついてないだけよ」
「診察についていいよ」

 

という、対処的な、上から目線ではあるけど、診察に付く気はある、という発言がありました。

「一人で頑張らなくて、主治医を巻き込んだ方がうまくいくような気がする」
「診察ついてかわらないかもしれないけど、やるだけやってみて損はないんじゃないかな…?」

と思い、診察についてきてもらうことになりました。

診察日を知ろうともしないためそれにまた怒るということも起きましたが、無事に診察を一緒に受けることになります。

 

 

3.診察当日

 

事前に主治医に親を連れていくことは連絡していました。

ここの連携は本当に大切です。

精神科医の立場から言うと、ある程度の時間が必要なのと、説明の段取りを考えておかなくてはいけません。

せっかくの思いをして親を診察室に連れて行って不毛に終わるのはもったいないので、主治医との連携ははかってください!

 

診察の待合で母と待ち合わせをしましたが、

「今日は先生から呼ばれたのかな…?」
「急に来て、変な人と思われないかな…?」

と不安げな様子。

いきさつを忘れられてるのも、どうでもいいと思ってるから忘れてるのかな?と思って怒りそうになるけど、母の不安が強そうだし我慢しました。

 

「体調どう?」

「うーん。ぼちぼちです。」

 

母がいるのでうまく答えられません。前日も母が診察室にいる、というのが不安で仕方なく、別々にお話してほしいっていうか迷ったくらいです。

理解されずに、批判や批難をされることに対する恐怖心からくる不安でしす。

 

「だいぶ良くなってきていると思うんだけど」
「家族仲が良くなるともっと良いね」

「家族仲がだいぶ悪いです」
「休職してから過去のことを責めるようになったんです」

 

母が入ってきて、そこから母への説明をしてくれました。

 

「大変ねえ」
「仕事をしているときはいろんなことが起きるから目立たないけど、休職をしているとフラッシュバックが目立ちやすいかもね」
「文字文化って、頭で考えて、本来のその人らしさを無視しちゃうから、こんがらがっちゃう」
「一生懸命頑張る人に多い傾向」
「この家族もみんな頑張る人だったんじゃないかな」
「文字文化で頑張りすぎるところから抜け出そうとするから、ぶつかってるのが今なんじゃないかな」
「でも抜け出したほうがきっと楽」
「言葉でやりとりすると余計にこんがらがるから、神田橋先生の心身養生のコツ、おすすめ」

 

といって、心身養生のコツの愛着障害のページのコピーを先生が母に渡す。

 

「え…。愛着障害なのかな?」

愛着障害の言葉を知っているの?」

「うん。」

「なんで?」

「…。」

 

答えてくれなかったけど、母なりに調べたり考えたりしてくれてたのかな。

愛着障害の言葉をそもそもしらないで受診する患者さんもいるし、母の世代で自然に言葉を知ってるとは考えにくい。

 

「そういうのがいいと思うよ」
「お母さんのお母さんから大変だったんじゃないかな?戦争を経験している世代ってきっと大変だったんだと思う」
「誰が悪いわけでもないと思うよ」

「私が傷つけることをしたからこんな風になっているんです」

「悪意があるわけじゃないし、お母さんのせいじゃなくて、環境のせいとかだと思う」

「興奮している時に電話を切ろうって言われた時に、『あなたたちのせいでこんなに苦しいのに』って言っちゃうんです」
「電話で喧嘩になったときに『私のことが嫌いなんでしょ?』って言われて、何も言えなくなります」

「それはこの人(ひょん)がフラッシュバックしているだけだし、『私のことが嫌い』はお母さんのフラッシュバック」
「今、きついんだねってなだめることが大切」
「誰が悪いかとか昔のことをさぐると余計悪くなっちゃうから今を大切にするのがいいよ」

「まっすぐな人だから、いろんな人とぶつかっちゃう」
「繊細なところをなくせっていっても無理だから、安心できるところができるといいね」
「それがお母さんなんじゃないかな」

 

というやり取りがありました。

私の主治医のやり方の素晴らしいポイントは、とにかく親を責めていないこと。

親の愚痴もふわっと聞いてあげて、かつ本人を責めることをしていない。

話のふりかたも、自然。

これからのストーリーに繋げられている。

 

子どもの親も愛着障害があることがほとんどで、責められることに弱く、防衛的に言い返そうとしたり、治療同盟が結べなくなる、失敗を恐れて本人との関わりを避けるようになる、といったことが起きます。

精神科医の立場から言うと、親を責めずに、愛着障害の病態について伝える、協力をお願いするのは難しいんです…。

復職して、患者さんの家族に説明する必要があるときにこのやり方を真似しよう。

このブログを読んでる精神科医の先生がいたら、真似していいですよ(`・ω・´)

 

診察受ける側の人たちは、こんなやりとりがあったんだな、くらいに読んでください。

担当してくれてる先生で説明の仕方も変わるので、参考程度に。

 

3.診察が終わって

 

母なりに悩んでたんだなっていうのが分かってちょっと落ち着き気味です。

診察に同伴してもらう意味合いって、親に説明してもらうだけじゃなくて、子ども側が親の気持ちや態度を知ることができる点にもあると思います。

実際に自分が説明してもらって気が付きました。

 

親の理解が得られやすい時期の1~3のタイミングを逃していて、望みが薄いと思っていたけど、少しいい方向に進みそうです。

4つ目に、親側の準備ができているかどうか、ということも追加できます。

ただ、子ども側から見て、これはすごくわかりにくいんですよね。

自分が親に話を切り出せて、親がそれを受け止められれば、準備としてはまずまずできているのかなと思います。

1~3のタイミングが揃っていれば、より解決へ進めやすくなりますが、揃ってなくても、うまくいきそうなこともあるようです。

 

ただ、実際にトライしてみて、うまくいかない場合もあり得ます。

その場合も、期待しすぎずに次のタイミングを待つ姿勢が必要です。

 

まとめ

・親の理解、協力が得られやすいタイミングは3つある
・3つのタイミングを逃してしまっても、打開したい気持ちがあって、部分的でも親に協力してもらえるなら可能性がある
・専門的な知識があっても親に愛着障害の説明をして理解を得ることは難しい
・主治医から説明してもらいたいときは事前に主治医に伝える
・ダメでも期待しすぎずに次のタイミングを待つ姿勢が大切
 
おすすめの一冊
 
愛着障害克服のために、まずはきちんとした知識を得ておくことが大切です。
何度も岡田先生の本はご紹介していますが、是非読んでください。