ひょん先生は背中で語りたい

精神科医。いじめられ体質から成長中。月曜日更新予定。

ポリヴェーガル理論 実践編~安心感の育て方~

こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。

 

前回はポリヴェーガル理論の理論編についてお話したので、今回は実践編についてお話しようと思います。

 

私が診療業務の中で、愛着障害PTSDの患者さんの治療をしていて、安心感のなさは大きなテーマでどうしたらいいんだろうということをずっとずっと考えていて、現段階ではこれが安心感が鍛えられる信頼できるトレーニングとしておすすめしています。

 

みんなで安心する力を育てていきましょう。

少し長くなってしまったので、とりあえず少し実践していたい方は、安心の育て方のStep1だけしてみて、余裕があれば他のStepにも進んでみてください。

 

 

ポリヴェーガル理論の基本の復習

 

自律神経には大きく、活動を活発にする交感神経系と休息を行う副交感神経系に分けられますが、さらに副交感神経系は人とつながるための腹側迷走神経系とシャットダウンしてしまう背側迷走神経系に分けられます。

ちょっとしたことでパニックになったり、固まったりしないためには、腹側迷走神経系が機能できる範囲を広げ、交感神経系や背側迷走神経系も過剰な活動にならない範囲で適度に働けるようにする必要があります

 

もう一回、基本を復習したい方は過去記事をご参照ください

drrpsychiatry.hatenablog.com

 

安心の育て方

 

Step0:まずは自分の安心感を育てることが大切!

Step1:安心を「学習する」

Step2:怒りを発散する

Step3:嫌な反応を「飼いならす」

 

注意!

全部やろうとすると混乱してしまうので、まずはStep1から根強くトライしてください!

効果は時間がかかるのでやってみてすぐにあきらめちゃダメ!

 

Step0:まずは自分の中の安心感を育てることが大切

 

これを知らないと長い間、名医や名カウンセラーを探す長旅を始めないといけなくなってしまいます。

安心感のない、とても怖い世界で生きてきて、そこから抜け出して、新しい世界への一歩を始めようと頑張って助けを求めてもうまくいかない!ということが起きてしまいます。

 

相手からの安心感に依存してしまうと、関係自体が破綻してしまうことが多いです。

理由については前回記事に記載しているので、気になる方は読み直してみてください(【愛着障害】誰も信頼できず安らげない理由 - ひょん先生は背中で語りたい

 

 

Step1:安心を「育てる」

日々安心感を与えることで、安心できる幅が広がっていきます。

最後にご紹介する「安心のタネ」にはいくつも方法の提案がしているので、そのなかから合うものを実践してみても良いと思いますが、選択肢が多すぎると混乱してしまう人もいるので、まずはお手軽にできるものからしてみると良いと思います。

 

安心を育てるには、背側迷走神経系と腹側迷走神経系のそれぞれを鍛える必要があります。できるものとを1,2個生活に取り入れてみると良いでしょう

順番に取り入れたいなら、人とのつながりを指摘する方が刺激が強く感じる人もいるので、背側迷走神経系から鍛えると良いと思います

 

①背側迷走神経系の鍛え方
背側迷走神経系を鍛えるもの(体の休息モード):
マッサージ、首の後ろに触れる、腎臓(背中の肋骨のあたり)に触れる、腸の動きを意識しながらおなかに触れる

 

心理職や精神科に知識がある程度ある方で、自律訓練法や筋弛緩法、呼吸法などの知識がある方はそうした方法を試してみても良いと思います。

首の後ろや腎臓のあたりを触れることでどう安心感が得られるのかわからないのですが、「安心のたね」にも書かれいるし、私が実際にやってみると落ち着く感じがします。

おそらく、大切なのは、体に優しく触れて、その触れている感覚に意識を向けることなんだと思います。体に優しく触れること自体が安心感につながるし、感覚に意識を向けることも危険な状態ではないことを体に教えて、自分を大切にしようとしているメッセージを送っていることにつながるのだと思います。

 

②腹側迷走神経系の鍛え方
腹側迷走神経系を鍛えるもの(人とのつながるモード):
息を吐く、顔をぎゅっとしたり力を抜いたりする、手をグーパーする、きょろきょろする、自然に触れる、自然の音に触れる、カフェなど人がいる安心な場所にいく、歌う

 

背側迷走神経系は体の休息に関するものでしたが、腹側迷走神経系は人とのつながるモードを高めるものです。表情をよく動かすことや人や周囲とつながることにつながる行動が腹側迷走神経系を鍛えてくれます

 

直接人とつながれるならそれが早いのですが、安心感が十分に育たたない状態であるなら、まずはその予行練習のように腹側迷走神経系を鍛えると良いでしょう。

 

Step2:怒りを発散する

私はキックボクシングをしています( ・´ー・`)写真はイメージです

そもそも危険の多い環境で育つことで理不尽な扱いを多く受けてきており、イライラすることもたくさんあり、潜在的に怒りはかなりありますし、自分の中の安心感が育ってくると、その怒りを表出したくなります。

今まで抑え込んでいた怒りを表出しようとするのはとても健康的なことなのですが、コントロールできる程度に発散することが大切です。

 

運動、プチプチ、歌う、壊れにくいものに怒りをぶつける

 

キックボクシングのミッド打ち相手との距離感になれる練習になるし、パンチしてもキックしてもやり返されないから安心して攻撃できるし、むしろ「ナイスパンチ!」なんてほめてもらえます。 習い事としてしているだけだから、誰かに足を引っ張られることもないし、褒められて素直に喜べます。相手に立ち向かう強さが身に尽くし、純粋なすっきり感や人間関係のすがすがしさもあるので(人間関係は場所によるかもしれませんけど)おすすめです。

 

Step3:嫌な反応を「飼いならす」

〚ライオン、鎖〛〚ライオン 人間〛〚ドーベルマン、大頭飼い〛飼いならす感のある画僧

 

 

 

安心が脅かされる状況はいくつかあって、純粋な安心を感じる力が弱いために危険と感じることがあります。今までのステップでそうした改善があったと思います。

別の危険としては、過去の心の傷がうずいて反応が起きたときに、それに振り回されてコントロールを失ってしまうことです。

「過去を思い出して反応が起きているけど、もうすでに終わったことで、この反応をコントロールできるものである」ということを知る必要があります。

 

以下の2点が必要になります。

 ①反応してしまうパターンを知る
 ②反応が起きてしまったときに落ち着ける対処法を知る

 

①反応してしまうパターンを知る

反応してしまうパターンは「馬鹿にされた」「雑に扱われた、大切に扱われなかった」「意地悪をされた」「自分に価値がないように感じた」などのパターンが多いです。

今まで受けてきた傷でパターンは異なります。

認知行動療法のABCシートなどを付けてみて、思い込みのパターンを知って、その反応がおこるたびに、これはいつものパターンだ、と認識できるだけでも、反応に振り回されずに冷静になれます

うまく説明できなくても、怒りのコントロールできなさがいつもと比べておかしいというだけでも、意識していればいつもの思い込みパターンに入ってないかな?と気付くことができます。

 

「意地悪をしてはいけない」「自分がどうせ何をしてもダメ」という思い込みのパターンで自分を責めてしまうこともあります。

ダメだと思う自分を認めてあげることが必要です。

「自分の悪いところ探し」にはセルフコンパッションも有効でしょう(セルフコンパッションについて - ひょん先生は背中で語りたい

 

②反応が起きてしまったときに落ち着ける対処法を知る

パニックになったときのお助けマニュアルをいくつかご紹介します

家事など日常のことをする
よかったこと、できたことを3つ記録する
ハミング
音楽を聴く
ロッキングチェアやブランコなどの揺れ
カレンダーで日にちや時間を確認(今を意識)
youtubeのほのぼの動画をみる
 

音楽は韻律に富んだものが良いでしょう。

子守歌のようなリラックス効果があります。

激しい音楽はかえって不安を煽るので、クラシックなどが無難です。

歌う、ハミングなどは、人とのコミュニケーションにつかう声帯を刺激するので、結果として安心につながります。

 

患者さんたちがやってみてよかった方法もご紹介します。

質よりもたくさんあることが大切です。

これでダメならこれ!というものを準備しておきましょう。

文章を書く、音楽を鑑賞・演奏する、絵を描く、運動をする、料理をする、犬や猫などのペットと遊ぶ、アロマを焚く、運動をする、丁寧にドリップコーヒーを入れる

書店やコーヒーショップなどの適度な人目のある場所にいく

 

 

まとめ

安心の育て方と、安心を育てた後に生じる怒りの上手な出し方や反応が起きてしまったときの対処法についてご紹介しました。

安心はゆっくりゆっくりした育たたないので、めげずにちょっとずつトライしていきましょう。

まずはStep1が大切です。

私もマスターしきれなてないけど、少しコントロールできずつつあるので一緒に頑張りましょう。

 

おすすめの本

 

「安心のタネ」の育て方

ポリヴェーガル理論の入門編。

安心する力を育ててくれる簡単なトレーニング法を教えてくれているので、合うものを探してみてください。

 

 
「いごこち」神経系アプローチ

「安心のたね」よりも難しい内容を理解したい方におすすめ。