ポリヴェーガル理論~基礎編~
こんにちは。愛着障害、いじめられ体質克服中の精神科医ひょんです。
今日はポリヴェーガル理論のご紹介です。安心感を育てるうえで参考になります。自分のなかの安心感を育てたい方は是非ご覧ください。
ポリヴェーガル理論とは
自分の意思でコントロールできない、絶妙なバランスを整出てくれるのが自律神経系です。自律神経系には、交感神経系と副交感神経系があります。交換神経系は活動を促し(発汗、動悸、体の緊張など)、副交感神経は休息(消化、休息など)を促します。
従来は、その二つだけと捉えられていましたが、休息を促す作用をする副交感神経系はさらに2つに分かれていることが発見されました。リラックスして人とつながる腹側迷走神経系*1と、シャットダウン(解離*2、抑うつ)してしまう背側迷走神経系*3にわけられます。これを、スティーヴン・ポージズが1994年にポリヴェーガル理論として発表しました。
進化の歴史と実際の自律神経系の働き
背側迷走神経系、交感神経系、腹側迷走神経系の順番で進化しました。危険に見舞われたときに、最初の進化では、なるべくエネルギーを使わないシャットダウンが行われました。これは爬虫類でも行われます。動かなくなることでエネルギーも節約できるし、捕食動物から食べて害があると思われて逃れることができるかもしれないメリットがあります。
その次に交感神経系が発達しました。闘争/逃走反応と呼ばれる、戦うか逃げるかの反応が起きるようになりました。立ち向かうか、その場から全力疾走で逃げるか、という反応ができるようになったのです。なわばりのある動物や、肉食動物から逃げる草食動物を思い浮かべてもらうとわかりやすいと思います。より積極的に危険から自分の身を守る行動を身に着けたのです。
哺乳類ではさらに発達した機能を身に着け、他の個体とつながることで危険を回避するようになりました。個体でいるよりも安全が確保できるためです。これが腹側迷走神経系です。
この3つの経路がある動物の反応は、進化とは逆の順番で進みます。トラブルが起きたとき、いきなり戦う人はいません。まずは、何が起きたか確認したり、気持ちを伝え、つながりを保った状態での解決を目指します。つながりを保つ腹側迷走神経系が働いている状態です。出来事に見合わないような敵意を向けられたり、殴られそうなどの身の危険を感じれば、喧嘩になったり、その場から撤退しようとするなどの行動がおきるでしょう。戦うか逃げるかの交感神経系が働いている状態です。さらに強い恐怖を感じる場面になれば、恐怖のあまり身動きが取れなくなったり、意識が遠のくこともあるかもしれません。シャットダウンの背側迷走神経系が働くのです。
自律神経系の活動の状態のイメージと、それぞれの自律神経系の働くモードについて図に示します。
シャットダウンの背側迷走神経系は自律神経の活動が低すぎる状態で、戦うか逃げるかの交感神経は活動が高すぎる状態です。腹側迷走神経系は適度にリラックスしている状態です。
交感神経も背側迷走神経系も極端なモードだけでなくて、実際には適度にリラックスした状態で働くこともあります。交感神経系がある程度リラックスした状態で働いていれば、遊びのモードです。安全を感じながら意欲的な行動が起きています。仕事で生き生きと働いている状態でもあります。多少のストレスがありながらも、楽観的に活動ができるのです。背側迷走神経系がある程度リラックスして働いていれば、消化吸収が行われる休息モードです。仮死状態に至らずに体の回復を図るのです。従来の交感神経、副交感神経に二分されるときに副交感神経の働きのイメージです。
ポリヴェーガル理論と安心を感じる力の関係
安心する能力というのは、適度な交感神経系、腹側迷走神経系、適度な背側迷走神経系が働くことでできる状態を維持することです。この範囲が狭いと、戦うか逃げるかの交感神経系や解離や抑うつ状態になる背側迷走神経系が働きやすい状態になってしまいます。PTSDや愛着障害では、このリラックスして活動できる範囲が狭いために、感情やコミュニケーションの反応の波も大きくなりやすく、フラッシュバックや解離が起きやすいと考えられます。
安心する力を育むためには、適切な範囲の自律神経の活動範囲にとどまる力を育んでいく必要があります。
まとめ
今日はポリヴェーガル理論の概略的内容についてお伝えしました。安心を感じる力を自律神経の発達を通して育てていくことが必要です。
緊張しすぎない程度に人とつながることや、自分一人でほっとする瞬間を増やしていくことで安心を感じる力を育てることができます。今日は内容が少し長くなってしまったので、安心の育て方の詳細はまた別のブログに書こうと思います。
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