ひょん先生は背中で語りたい

精神科医。いじめられ体質から成長中。月曜日更新予定。

【愛着障害】手放すと楽になれる3つの禁止事項

こんにちは。

いじめられやすい理由としてご説明したように(【愛着障害】どこにいってもいじめられやすい理由 - ひょん先生は背中で語りたい)、自分の受け止め方で生きにくさが生じることがあります。愛着障害がある場合、幼少期の過酷な環境に適応するために歪んだ世界観を持っていることが多いです。それは幼少期を生き延びるために必要なものでした。しかし、幼少期を生き抜いて得た今の環境ではかえって生きづらさが生じているのです。特に対人関係で苦しみを生みやすいのは今日お話する3つの禁止事項です。禁止事項そのものがあなたを苦しめ、相手との距離を生みやすくしているのです。

この3つの禁止事項を手放せれば、生きやすくなるし、人との関わりも今より楽になれます。

 

「NGを示す 不屈の拒否 | フリー素材のぱくたそ」の写真[モデル:高尾実生]

 

 

①意地悪をしてはいけない

 

愛着障害がある場合、大切にされない経験を繰り返しているので、自分は人に優しくあろうとする善い人が多いです。

ただ、「意地悪をしてはいけない」という気持ちが強すぎて、自分のなかの意地悪な気持ちを否定したり、無視したりしてしまいます。自分の気持ちに蓋をして、非難まで加えることで、さらに自分を傷つけ、自分自身に対する否定感を強くします。よくわからないイライラも強くなって、意地悪な気持ちも起きやすくなり、悪循環になります。

意地悪をしないように気を付けている分、人の意地悪さを感じる言動にも敏感になります。他人の特段考えもないような行動が敵意があるように感じたり、傷つきやすさにつながります。実際にあなたが敵意を向けてなくても、警戒心が強くなることで相手から敵意を向けられたと受け取られてしまい、応酬として敵意がむけられることもあります。

 

人に優しくしなくてはいけない、人の気持ちを大切にしなくてはいけない、というのもこのカテゴリーに入ると思います。自分ばかりが優しくあろうと頑張っているけど、だれからも大切にしてもらえない、という状態になりやすいです。健康的な人は「意地悪な自分」も自分の一部と認めていて、否定感も強くありません。実際に「意地悪な自分」は存在しており、それを隠していることが、健康的な人からみると気味悪く感じられ、距離を取られやすくなります。意地悪をしないあなたを利用してくる人ばかりが周りに集まってしまいます。

 

②正しくないといけない

 

理不尽な扱いを受けてきた分、自分は正しい行いをしようとする方が多いです。

正しくあろうとするのが間違っているわけではないのですが、過剰に正しくあろうとする点と、その正しさが他者や環境によって振り回されやすい点が生きにくさを生じさせます。

型にはまらない部分の自分は否定し続けます。①の「意地悪をしてはいけない」のと同様に、正しくない自分を責める傾向があり、ますます自信を失っていきます

「正しい」の基準も、他人基準であるため、目の前の他人の言動、環境によって変化します。「正しくないといけない」気持ちの根底には、「自分が悪い」という気持ちがあり、正しくない点をあげつらう癖がついていることが多いです。相手が悪いと思っていることでさえ、どこかで自分が悪かったのではないか、正しくない点はなかったかと感じていることがあります。終わったことで引きずってしまうときは、無意識であっても自分を責めていることが多々あります。

「正しくないといけない」気持ちを他人にも求めているので、他人のルール違反や、こうでなくてはいけないことを相手がしなかったときにフラストレーションを感じやすくなります。

 

③人を困らせてはいけない

 

人に迷惑をかけないようにするために、過剰に空気を読みすぎる傾向にあります。そのためのエネルギーも使うし、感情を我慢するために、思っている以上のエネルギーを使います。

やはりこれも自分に厳しい分、人にも要求してしまうので、輪を乱すような言動をする人がいれば気にしてしまいます。泣いたり怒ったりする子供をみて、イライラしてしまう、というパターンもここから来ているのではないかと思います。私も泣きたかった、怒りたかった。ずっと我慢してきたのに、なぜ、という気持ちになりやすいのです。

 

まとめ

 

「意地悪をしてはいけない」「正しくないといけない」「人を困らせてはいけない」と自分の禁止事項を徹底させることが、自分の否定感を強め、周囲との孤立を生みやすくしています。これらのしてはいけないことから解放することが必要です。

 

処方箋

この3つの禁止事項を手放すためには、まずはあなたのなかの気持ちを肯定することが必要です。意地悪な気持ちは誰にだってあるし、みんなの正しさなんていい加減だし、嫌なことは嫌って言っていいんです。

自分の気持ちを認めてあげることが苦手な方は、セルフコンパッションを使ってみると良いでしょう(セルフコンパッションについて - ひょん先生は背中で語りたい)。自分の気持ちがよくわからない人は、日記や筆記開示も役に立つと思います(言いたいことを我慢しすぎることの3つのデメリット - ひょん先生は背中で語りたい 処方箋を参照)。

それから、禁止していることを少しずつ自分に許可してみると良いでしょう。あんまりにも露骨な意地悪やルール違反をしろということでなくて、いつもは順番をゆずるけどゆずるのやめる、とか、愚痴ってみたり、お願いごとをしてみたりです。

 

根本的には自分に対する信頼のおけなさや自信のなさが原因となっているので、自分軸を作る取り組みを入れると良いでしょう(【愛着障害】どこにいってもいじめられやすい理由 - ひょん先生は背中で語りたい 処方箋を参考)

 

おすすめの一冊

 

子どもがいるお母さん向けに書かれている本ですが、子どもがいなくても当てはめることができます。どういう自分が許せずに、禁止してしまっているのか、どういう風にほぐしたら良いのか、ということが、より詳細に書いています。是非実践に役立ててください。