ひょん先生は背中で語りたい

精神科医。いじめられ体質から成長中。月曜日更新予定。

愛着障害とは

愛着障害について軽く触れたことはあるのですが、用語の説明していなかったので、今日は愛着障害についての説明をしようと思います。

 

 

愛着とは

 

岡田尊司先生、神田橋篠治先生の言葉を引用させていただくと、「愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台部分を形造っている。(岡田尊司著、愛着障害光文社新書、2012年)」という説明や、「(愛着障害とは)一言でいうと愛情関係のなかでの安らぎを感じる能力の未発達(神田橋篠治著、治療のための精神分析ノート、創元社、2016年)」という説明がなされています。

私なりに一言でまとめれば、安心する力だと思います。

 

愛着障害とは

 

愛着障害ではその安心する力を持っていない状態になります。

愛着はおよそ2歳までの間に形成されます。養育者から守られ支えられて適切なケアを受けることで愛着を身に着けます。この時期に安全や安心を確保できると安定した愛着になりますが、そうでないときに愛着に育ちにくくなります。養育者以外から、例えば親戚や周囲の人から必要なサポートが得られれば安定した愛着となることもあります。

虐待や、虐待までいかないにしても子供のケアが十分に行われない不適切養育により愛着形成がなされないと、その後の心の健康、行動パターン、対人関係や仕事などの社会性、体の健康までにも影響が及びます。

 

愛着障害の人の特徴

愛着障害の人と特徴として

・傷つきやすい

・不安や空虚感を強く感じている、もしくは気持ちをあまり感じられない

・自分に自信が持てない

・人を信用することができない

・人に批判されたり攻撃されることを恐れている

・自分の意見を言えない、もしくは強く言いすぎてしまう

といった特徴があります。愛着障害のある場合、リストカットなどの自傷行為の経験があることが多いです。

両極端な特徴もありますが、それは愛着障害に種類があり、それぞれの特徴の違いがあるからです。

 

愛着のパターン、3つの愛着スタイル

愛着のパターンは3つあり、安定型愛着スタイル、回避型愛着スタイル、不安型愛着スタイルにわけられます。

安定型愛着スタイルは、その名前の通り、愛着が安定している場合の愛着のパターンです。愛着障害にあたるのは、それ以外の3つのパターンの愛着を持っている場合です。

回避型愛着スタイルは、人との関わりを避けようとする傾向が強く現れます。ただ、強いストレスが加わる対人場面では強い攻撃性をみせることもあります。愛情や安心を求めたときに与えられない体験を繰り返しており、人とのあたたかな関係性の経験が十分でないことが多いです。

不安型愛着スタイルは、人を避けようとする回避型愛着スタイルと異なり、愛されたい気持ちが強く、恋愛などの場面で依存しやすい傾向にあります。空気や人の顔色に敏感で、ただし、過剰に反応しすぎてしまうため正確でないこともあります。見捨てられることに対する恐怖感や愛されていないことに対する不安が強く、それが相手の負担となってしまうこともあります。

それぞれに特徴の違いはありますが、いずれも安心や安全を感じる能力の未発達、経験不足です。

 

愛着障害の治療

 

基本的には経験不足が問題なので、その不足した経験を補っていくことが治療になります。安心感には人から得られるものとと自分で生み出すものがあります。

人から得られる安心感は、家族や身の回りの人で協力的な人がいればいいですが、そうした核となる人がいない場合は病院やカウンセリングに通うことで安心感を育てるサポートができると思います。

安心感を自分で生み出すためには、自分を肯定していくことや感覚を大切にしていく必要があります。ありのままを認めることや、自分の気持ち良い感覚をつかんでそれを増やしていくことが安心感を自分で生み出すことにつながるのです。自分に優しくするトレーニングが必要です。身の回りのサポートがある場合でも、それまで傷ついてきた体験が多すぎるため、些細なことでサポートしてくれる人を信じられなくなったり、傷つけられたと感じてしまうことも多いため、自分で安心感を生み出すトレーニングは行った方が良いと思います。

長年染みついている行動パターンや愛着に感じ方の癖は一朝一夕に変えられるものではなく、また、愛着障害の場合、全か無かでとらえる傾向があり、一つ試して効果がなければ効果がない、もう助かる方法がない、とあきらめる人が多いですが、粘り強い試行錯誤で改善が見えてきます。

今回の記事は方法についてざっくりしか書いていないけど、「セルフケア」や「セルフケア その他」(私のオリジナルを加えているのでカテゴリーを分けています)の記事を参考にいろいろと試してもらえたらと思います。

 

まとめ

 

今日は愛着障害についての説明をしました。

生きづらさを抱えている人や、そのサポートをしようとしている人の助けになるといいなと思います。

小さいときの養育環境は今から変えることはできませんが、今からの生き方は変えることができます。過去の大人たちを恨めしく思うこともあるけど、恨んじゃう自分も否定せずに受け入れてあげて、少しずつでも前に向かいましょう。未来は作れるのです。一緒に頑張りましょう。

 

 

愛着障害について、岡田尊司先生の本がやっぱりわかりやすいと思うのでリンク貼ります。