ひょん先生は背中で語りたい

精神科医。いじめられ体質から成長中。月曜日更新予定。

セルフコンパッションについて

こんにちは。

自分への思いやりや優しさを育むセルフコンパッションについての紹介をしようと思います。自分に自信がない人や、自己肯定感が低く、自分をとことんいじめてしまう人におすすめです。

合う人、合わない人はいると思うので、ざっと読んでみてやっていみようかな、という方は是非取り入れてみてください。

 

 

セルフコンパッションとは

 

自分に対するやさしさや思いやりを向けることです。セルフコンパッションが高いと、不安や抑うつは低く、幸福感や人生の満足度が高く、レジリエンスも高いと言われています。

愛着障害PTSDの患者さんでは、身近な養育者に批判、否定され、こうでなければならないという期待を背負わされていることが多く、自分自身を否定的に捉え、終始ダメ出しをして、新しいことにトライする意欲や活力を失い、さらに自分にダメ出しを繰り返すという悪循環になっていることが多いです。

セルフコンパッションを取り入れることで、ありのままの自分を認め、励ますことができるようになり、自己実現の助けとなります。

 

セルフコンパッションの実践

 

①マインドフルネス

②自分への優しさ

③さらに優しさを広げる

 

の3段階にわけて考えています。

 

①マインドフルネス

自分の気持ちを受け入れるところがファーストステップになります。

~と言われて嫌だったね、~できなくて悲しかったね、といった具合に。できなくて悔しいこともあると思います。

自分を抑え込む傾向が強い人は、強烈な感情が沸いてもどう表現するものなのかわからないことも多いので、悲しみや怒りなど、感情の名前を付けてあげたり、一旦気持ちを書き出してみると良いでしょう。

 

②自分への優しさ

自分へ優しい声掛けを行います。自分の厳しい人は、もし友達だったらどのように声掛けするかを考えましょう。

~できなくて悲しかったね、~されて嫌だったね、というように。

できないことを自分で責めてしまうようなときは~できるようになるといいね、と声掛けをしてあげましょう。

 

③優しさを広げる

自分の気持ちを受け入れる、味方をすることがセルフコンパッションの基本となりますが、自分が心地よくなることをしてあげたり、気持ちだけでなく、体にも思いやりを広げたり、自分自身に対しての優しさだけでなく他人にも優しさを広げていきます。

体を優しくなでてあげたり、体の心地よい感覚を広げてみてください。体に思いやりを広げる手法として、体の苦しい部分に意識を向けて、そのままを感じ取り、筋肉が緊張しているなら緩めるようにしてみたり、痛みなど自分でコントロールできないつらさであるなら、体のパーツに労いの言葉をかけてみてください。

また、他人へ優しさを広げることについて、慈悲の瞑想を行うことでポジティブな感情が増えるという研究もあります。つながりを持つことで安心感も得やすくなるのでしょう。大切な人を思い浮かべて、「私が幸せでありますように、あなたも幸せでありますように」といった短いことばを繰り返すのも良いと思います。

注意してほしい点としては、他人に尽くす、といったことではなく、あくまで自分を満たしたうえで/満たしつつ、他人にも想像力を膨らます、といった手順になります。

自分が安心できる人と場所を想像するといった手法もあります。

より詳しく知りたい方は、ワークブックを読んでみてください。きっちり一つずつしなくても、やりたいことろからやってみるので良いと思います。

 

 

フラッシュバックや解離の注意点

セルフコンパッションは薬と違って副作用が生じるものではありませんが、ひどいトラウマ体験がある方は、マインドフルネスの段階で感じないようにしている感情や感覚にさらされることでフラッシュバックや解離がひどくなってしまう人がいます。また、愛着障害やPTSDでは自分に優しくすることを長く禁じられている人が多く、自分自身に優しさを向けたときに、こころの傷がうずいてしまい、激しい感情に襲われる人もいます。

つらいときはストップするにしましょう。何が起きたかわからない状態は混乱を引き起こし、出来事の理解が冷静さを取り戻す助けとなるため、古傷がうずいてしまっていることを認識することは大切です。大変なことが今までたくさんあってつらかったね、自分自身を受け止められるようになると良いね、といった言葉かけをしても良いと思います。

酷いフラッシュバックや解離がおきているときは、現在から過去に意識がまるごと吹き飛ばされている状態なので、過去ではなく現在にいるのだという感覚を体に教えることが大切です。呼吸や体の感覚に意識を向けたり、簡単にマッサージしてあげるなどすると良いでしょう。

 

まとめ

フラッシュバックや解離がひどくなってしまう場合は注意が必要ですが、基本的には特に害が生じにくいセルフケアの手法としてセルフコンパッションはおすすめです。

おそらく、健康的な人は習うことなく身に着けているスキルなのだと思います。認知行動療法などの手法もなんとなくみんなが身に着けていることを系統的に身に着ける手法になると思うのですが、セルフコンパッションの入り口は受け止めて励ます、という簡単さもありますので、是非取り入れていただけたらと思います。

愛着障害、PTSDの方は特に、全か無の思考になりやすく、短期間やってみて効果がなかったら諦めてしまうことが多いのですが、ぼんやりと頭にいれておいて、時々ためしてみると効果は出やすいと思います。うまくできなくても、今は難しいね、いつかできるようになると良いね、といった声掛けや、ちゃんとしたいと思って自分を責めてしまうね、自分を責めてしまうと苦しいね、いつか自分を責めずに受け止められるようになると良いね、といった声掛けをしてあげましょう。